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1999年(平成11年)

平成10年神審第103号
    件名
油送船第八惠信丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年6月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

須貝壽榮、米原健一、西田克史
    理事官
橋本學

    受審人
A 職名:第八惠信丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
本船…右舷ファッションプレート、同舷後部外板凹損、同外板付近の船尾楼甲板の一部が座屈
西宮防波堤…少し欠損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年6月15日21時10分
兵庫県尼崎西宮芦屋港
2 船舶の要目
船種船名 油送船第八惠信丸
総トン数 199トン
全長 49.03メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 625キロワット
3 事実の経過
第八惠信丸は、船尾船橋型の鋼製油タンカーで、A受審人ほか2人が乗り組み、専ら和歌山県和歌山下津港又は大阪港堺泉北区から神戸港及び徳島県今切港へC重油の輸送に従事していたところ、同油500キロリットルを載せ、船首2.50メートルの船尾3.40メートルの喫水をもって、平成10年6月15日17時20分和歌山下津港を発し、神戸港に向かった。
ところで、第八惠信丸は、同日08時00分から今切港において揚荷を行い、12時00分これを終えて同港を出港し、14時45分和歌山下津港の錨地に至り、15時30分着桟のうえ17時00分まで積荷を行った。その間、A受審人は、疲労気味で体調が万全でなかったが、荷役中はその監督に、出入港時は操船の指揮に、また、航海中は船橋当直にそれぞれ当たっていたので、休息をとることができなかった。
こうしてA受審人は、和歌山下津港出港時から操船の指揮をとり、18時30分友ヶ島水道の加太瀬戸を北上中、夕食をとるために甲板長と交替し、同時50分昇橋して引き続き単独の船橋当直に就き、19時38分大阪府泉州沖空港島A灯標から302度(真方位、以下同じ。)2.7海里の地点に達したとき、レーダーにより関西国際空港の南西端を右舷側3海里に並航したことを確認し、針路を030度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.3ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
20時54分A受審人は、西宮防波堤西灯台から198度2.7海里の地点に至り、神戸港六甲アイランド東水路中央第1号灯浮標を左舷側至近に通過したとき、操舵を手動に切り替えて針路を同灯台の少し右に向く021度に転じたが、しばらくしてから同灯台の少し左に向けて左転したうえ、神戸港第3区深江浜町南側の私設桟橋の近くまで直進するつもりで、同港東側港界付近を北上した。
A受審人は、転針後眠気を催すようになったが、目的地まであとわずかなのでまさか居眠りすることはあるまいと思い、甲板長を船橋に呼び上げて見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとらないでいるうち、いつしか舵輪を握り立った状態で軽くうとうとし始めた。しかし、同人は、どうにか同じ針路を保持することができたものの、21時06分西宮防波堤灯台を左舷船首10度1,300メートルに見るようになったとき、神戸港から尼崎西宮芦屋港の港域に入り、間もなく居眠りに陥り、東西に延びる西宮防波堤に向首して、予定の転針が行われないまま続航した。
21時09分半A受審人は、ふと目を覚ましたところ、船首200メートルに前路を遮る西宮防波堤を認め、驚いて左船一杯、機関停止としたが及ばず、21時10分西宮防波堤西灯台から092度200メートルの地点において、第八惠信丸は、302度を向いたとき、右舷船首が西宮防波堤に30度の角度で衝突し、次いで船首が左に振られ右舷後部が同防波堤に衝突した。
当時、天候は曇で風力3の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期にあたり、視界は良好であった。
衝突の結果、右舷ファッションプレートが長さ4メートル、同舷後部外板が長さ3メートルにわたってそれぞれ凹損を生じ、同外板付近の船尾楼甲板の一部が座屈したがのち修理され西宮防波堤が少し欠損した。

(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、神戸港東側の港界付近を北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、西宮防波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独で船橋当直に当たり、神戸港東側の港界付近を北上中、眠気を催した場合、居眠り運航となるおそれがあったから、甲板長を船橋に呼び上げて見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、目的地まであとわずかなのでまさか居眠りすることはあるまいと思い、甲板長を船橋に呼び上げて見張りに立てるなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、予定の転針が行われないで西宮防波堤に向首進行してこれとの衝突を招き、右舷ファッションプレート及び同弦後部外板に凹損などを生じさせ、同防波堤を少し欠損させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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