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1999年(平成11年)

平成10年門審第86号
    件名
貨物船フンア トウキョウ貨物船サン デューク衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年7月8日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

阿部能正、供田仁男、清水正男
    理事官
伊東由人

    受審人
A 職名:サン デューク水先人 水先免状:関門水先区
    指定海難関係人

    損害
フ号…右舷船首外板及び右舷中央部外板に凹損
サ号…左舷前部外板に亀裂を伴う凹傷、左舷前部ハンドレールに曲損及び左舷後部外板に凹損

    原因
サ号…港則法の航法(避航動作)不遵守(主因)
フ号…警告信号不履行(一因)

    二審請求者
受審人A

    主文
本件衝突は、航路外から航路に入るサン デュークが、航路を航行するフンア トウキョウの進路を避けなかったことによって発生したがフンア トウキョウが警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日及び場所
平成10年4月27日06時37分
関門港関門航路
2 船舶の要目
船種船名 貨物船フンア トウキョウ
総トン数 4,914トン
全長 112.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 3,883キロワット
船種船名 貨物船サン デューク
総トン数 1,831.00トン
全長 84.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,912キロワット
3 事実の経過
フンア トウキョウ(以下「フ号」という。)は船尾船橋型のコンテナ船で、船長Cほか14人が乗り組み、コンテナ278個を載せ、船首5.0メートル船尾5.8メートルの喫水をもって、平成10年4月25日19時00分静岡県清水港を発し、大韓民国蔚山港に向かった。
C船長は、関門海峡を西行して、同月27日06時32分台場鼻灯台から322度(真方位、以下同じ。)830メートルの地点において、針路を026度に定め、機関を全速力前進にかけて13.7ノットの対地速力とし、関門航路(以下「航路」という。)をこれに沿って北上した。
定針したとき、C船長は、右舷船首19.5度1.4海里のところに水先旗を表示して航路に向かって航行を開始したサン デューク(以下「サ号」という。)を初めて認め、その監視に当たっていたところ、その後サ号が、航路外から自船の進路を避けないまま航路に入る態勢で徐々に速力を上げながら前路に接近して、そのまま進行すれば衝突のおそれがある状況となり、06時35分右舷船首25度1,100メートルに迫ったが、警告信号を行わないまま長音2回を吹鳴したのみで進行した。
06時36分わずか過ぎC船長は、六連島灯台から139.5度1,230メートルの地点に達したとき、サ号が右舷船首30度460メートルに接近して自船の前路至近のところを通り抜けようとしていることに気付き、機関停止を令し、短音2回を吹鳴しながら左舵一杯としたが06時37分六連島灯台から125度1,100メートルの航路内において、フ号は、325度を向いて約9ノットの速力となったとき、その右舷船首が、サ号の左舷前部に後方から25度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力1の南東風が吹き、衝突地点付近の潮流はほぼ転流時に当たり、視界は良好であった。
また、サ号は、船尾船橋型の貨物船で、B指定海難関係人ほか13人が乗り組み、コールタール1,962.118トンを載せ、船首4.3メートル船尾5.5メートルの喫水をもって、同月23日中華人民共和国嵐山港を発して関門港に向かい、着岸時間調整の目的で、同月26日07時00分同港六連島区の航路東方約700メートルの検疫錨地内にあたる、六連島灯台から108度1.1海里の地点に右舷錨を投じ、錨鎖4節を延出して錨泊した。
翌27日06時20分A受審人は、サ号を水先して関門港若松区第5区新日鉄化学化成品専用桟橋に着桟させる目的で同号に乗船した。
B指定海難関係人は、A受審人に対して、船橋に表示してある主機回転数及び速力は1979年新造時のもので、現在の速力は表値より低下している旨の説明を行い、同人に操船を委ねた。
A受審人は、水先業務に就き、06時22分揚錨開始を令し、同時30分船首が南方を向いて揚錨を終えたとき、右舷船首方の台場鼻南西方沖合の航路を北上するフ号を初めて認めたものの、微速力前進、ついで右舵一杯を令して回頭し、同時32分六連島灯台から111度1.1海里の地点で3ノットの速力になったとき、針路を272度に定め、機関を半速力前進に令して航路に入る態勢としたところ、左舷船首46.5度1.4海里に航路に沿って北上中の同号を認める状況となった。
A受審人は、06時33分六連島灯台から112度1,930メートルの地点で4.9ノットの速力となったとき、航路まで580メートルとなり、航路を航行中のフ号を左舷船首45度2,130メートルに認め、同号力自船の前路に接近する状況となったが、増速すればフ号の前路を無難に通り抜けられるものと思い、航路外で待つなどしてその進路を避けることなく、機関を港内全速力前進に令して徐々に速力を上げて進行した。
A受審人は、06時36分フ号を左舷船首36度550メートルに認める状況となったとき、自船の船首部が航路に進入して7.5ノットの速力となり、さらに速力が増す状況で続航したところ、同時36分半同号を左舷船首37度250メートルに認める態勢になったとき、フ号が右舵を取ったように見えたので、左舷対左舷で替わして航路の右側につくつもりで左舵10度を令し、B指定海難関係人が短音2回の操船信号を吹鳴した直後、同号が左転していることに気付き、同時36分半わずか過ぎ短音1回を吹鳴して右舵一杯、ついで機関停止を令したけれども、サ号は、300度を向いて約9ノットの速力となったとき、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、フ号は、右舷船首外板及び右舷中央部外板に凹損を、サ号は、左舷前部外板に亀裂を伴う凹傷、左舷前部ハンドレールに曲損及び左舷後部外板に凹損をそれぞれ生じた。

(原因)
本件衝突は、関門港関門航路において、航路外から航路に入るサ号が、航路を航行するフ号の進路を避けなかったことによって発生したが、フ号が、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人等の所為)
A受審人は、関門港六連島区の関門航路東方の検疫錨地から同航路に向けて航路外を航行中、航路をこれに沿って北上し、自船の前路に接近する状況にあるフ号を認めた場合、同号の進路を避けるべき注意義務があった。しかるに、同人は、増速すればフ号の前路を無難に通り抜けられるものと思い、その進路を避けなかった職務上の過失により、航路外から航路に進入して衝突を招き、フ号の右舷船首外板及び右舷中央部外板に凹損を、サ号の左舷前部外板に亀裂を伴う凹傷、左舷前部ハンドレールに曲損及び左舷後部外板に凹損をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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