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1999年(平成11年)

平成10年門審第122号
    件名
貨物船第三十一東王丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年6月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

宮田義憲、供田仁男、平井透
    理事官
今泉豊光

    受審人
A 職名:第三十一東王丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
左舷船首部外板に破口を伴う凹損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件防波堤衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月1日00時10分
宮崎港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第三十一東王丸
総トン数 677.08トン
全長 65.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット
3 事実の経過
第三十一東王丸(以下「東王丸」という。)は、主として大分県津久見港から九州及び中国地方の各港へ石灰石の運搬に従事する船尾船橋型砂利採取運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、石灰石1,400トンを載せ、船首3.85メートル船尾4.95メートルの喫水をもって、平成9年4月30日16時00分津久見港を発し、宮崎港に向かった。
A受審人は、20時00分日向 枇榔(びろう)島灯台から043度(真方位、以下同じ。)6海里ばかりの地点で前直の一等航海士から引き継いで単独で当直に就き、折からの霧模様の中、レーダーを使用して日向灘を南下し、23時38分宮崎港内防波堤灯台(以下「内防波堤灯台」という。)から030度3.1海里の地点において、針路を208度に定めて自動操舵とし、機関を10.0ノットの全速力前進にかけ、北防波堤と南防波堤との間の水路のほぼ中央部に向首して進行した。
ところで、宮崎港は、日向灘に面し、内防波堤灯台からほぼ北西方にくの字状に延びる820メートルの北防波堤と、北東方に開く水路を挟んで、同灯台の北東方900メートルばかりの地点から南西方に逆くの字状に延びる1,820メートルの南防波堤に囲まれて構築され、入航にあたって、その水路は防波堤の入口から700メートルばかり進入した後、幅220メートル長さ1,000メートルの東西方向から南北方向へ屈曲した掘り下げ水路を経て岸壁に向かうように形成され、掘り下げ水路の入口の両端に、その北側を示す第2号航路簡易灯付浮標が、南側を示す第3号航路簡易灯付浮標(以下「灯付浮標」という。)がそれぞれ設置されていた。
A受審人は、翌5月1日00時05分内防波堤灯台から056度360メートルばかりの地点に達し、霧が濃くなり、視界制限状態となる中、入港用意を令して手動操舵に切り替え、船首に一等航海士と甲板長を、船尾に機関長と一等機関士をそれぞれ配置して続航した。
A受審人は、00時06分半少し前内防波堤灯台から145度200メートルの地点で、針路を257度に転じ、機関を7.0ノットの半速力前進に減じ、同時06分半少し過ぎ同防波堤灯台から167度180メートルの地点に達したとき、ほぼ正船首250メートルばかりのところに前路を左方に斜航する両舷灯を掲げた小型船を認めて左舵10度をとり、同船が右舷至近を航過したのを確認して舵を中央に戻したものの、既に大きく針路が変わって南防波堤の衝突地点付近に向首していることに気付かなかった。
A受審人は、更に霧が濃くなって視程が200メートルばかりとなり、内防波堤灯台の灯火が全く視認できない状況となったが、水路から逸脱することのないよう、レーダーを監視するなどして船位を確認することなく、わずかな離路だからやがて前路に掘り下げ水路入口南側の灯付浮標の灯火が見えてくるものと思い、同灯浮標を探すうち、00時10分少し前船首に立つ一等航海士の「近い」との叫び声を聞き、自らも防波堤を認め、右舵一杯とし、機関を全速力後進としたが及ばず、東王丸は、00時00分内防波堤灯台から206度860メートルの地点となる南防波堤基部から東方200メートルのところに、その左舷船首が246度に向首して原速力のまま、35度の角度で衝突した。
当時、天候は霧で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、視程は200メートルであった。
衝突の結果、東王丸は、左舷船首部外板に破口を伴う凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、霧で視界が制限された宮崎港において、掘り下げ水路に向かって入航中、船位の確認が不十分で、南防波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、霧で視界が制限された宮崎港において、掘り下げ水路に向かって入航中、小型船を避航した後、内防波堤灯台の灯火が確認できない状況となった場合、水路から逸脱することのないよう、レーダーを監視するなどして船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、わずかな距離だからやがて前路に掘り下げ水路入口南側の灯付浮標の灯火が見えてくるものと思い、船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、南防波堤に向首進行し、防波堤との衝突を招き、左舷船首部外板に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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