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1999年(平成11年)

平成11年仙審第35号
    件名
漁船第二十八大勝丸ケーソン衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年9月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

上野延
    理事官
副理事官 宮川尚一

    受審人
A 職名:第二十八大勝丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
大勝丸…船首部を圧壊
ケーソン…北東端部のコンクリートに欠損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件ケーソン衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年11月24日00時30分
福島県小名漁港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十八大勝丸
総トン数 65トン
全長 31.76メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 698キロワット
3 事実の経過
第二十八大勝丸(以下「大勝丸」という。)は、沖合底引き網漁業に従事する船首船橋型の鋼製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、船首1.1メートル船尾4.2メートルの喫水をもって、操業の目的で、平成10年11月23日23時00分福島県小名浜港を発し、同時30分漁場に向けて同港東方沖合を航行中、僚船から小名浜港第1西防波堤(以下「西防波堤」という。)東端付近に乗り揚げたので引き降ろし作業に協力して欲しい旨の依頼を受けて反転し、僚船の乗揚地点に向かった。
ところで、小名浜港1号ふ頭の南側沖合に設置されている航泊禁止区域は、小名浜港第1西防波堤東灯台(以下「東灯台」という。)から327度(真方位、以下同じ。)520メートルの地点(イ点)、イ点から105度60メートルの地点(ロ点)、ロ点から193度300メートルの地点(ハ点)、ハ点から285度230メートルの地点(ニ点)、ニ点から359度160メートルの地点(ホ点)、ホ点から012度170メートルの地点(へ点)を順に結んだ線と同ふ頭とで囲まれた区域で、ロ、ハ、ニ及びホ各点には、灯色黄、灯質4秒1閃光の灯浮標がそれぞれ設置されていた。また、同ふ頭南側沖合西防波堤北側にケーソン置き場が存在し、同置き場内には北側の長さ12.18メートル南側の長さ1590メートル幅13.00メートル海面上の高さ4.00メートルのコンクリート製台形型ケーソン(以下「ケーソン」という。)が置かれ、その北東端が東灯台から281.5度271メートルの地点にあり、ケーソン付近には、航行船舶の接触事故などを防止するための灯色黄、灯質4秒1閃光の灯浮標が、東灯台から291度174メートルの地点(A点)、A点から269度118メートルの地点(B点)及びB点から210度50メートルの地点(C点)の各地点にそれぞれ設置されていた。
A受審人は小名浜港を基地としていたので、航泊禁止区域及びケーソン付近に灯浮標が設置されているのを知っており、入出航時には、同区域とケーソンの間(以下「狭い水路」という。)を航行していた。
A受審人は、小名浜港内の僚船乗揚地点に至って同船の引き降ろし作業を終え、翌24日00時26分東灯台から343度80メートルの地点で、再び小名浜港東方沖合の漁場に向けて発進し、針路を270度に定め、機関を微速力前進にかけ、平均1.9ノットの対地速力で西防波堤沿いに進行した。
発進したときA受審人は、明るい作業灯の照明のもと、乗り揚げた僚船の引き降ろし作業を終え、目が暗さに順応しておらず、周囲がはっきり見えない状態で操舵操船に当たり、同時27分正船首至近にA点の灯浮標の灯火(以下「ケーソンの灯火」という。)を初めて認めたが同灯火を航泊禁止区域南東端ハ点の灯浮標の灯火(以下「航泊禁止区域の灯火」という。)と見間違い、視認する灯浮標の灯火を右舷に見て航過すれば狭い水路を航行できるものと思い、目が暗さに順応するまでレーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行うことなく、同灯火を右舷側に替わして針路を270度に戻したところ、ケーソンに向首進行することとなったが、これに気付かず、同時30分わずか前右舷船首至近に迫ったB点の灯浮標の灯火を認め、左舵一杯としたが及ばず、00時30分東灯台から281.5度271メートルの地点において、西防波堤北側のケーソンの北東端に原針路、原速力のまま衝突した。
当時、天候は晴で風力1の北北東風が吹き、潮候はほぼ上げ潮の初期であった。
衝突の結果、大勝丸は船首部を圧壊し、ケーソンは北東端部のコンクリートに欠損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件ケーソン衝突は、夜間、小名浜港において、乗り揚げた僚船の引き降ろし作業を終え、同港を出航する際、船位の確認が不十分で、ケーソンに向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、小名浜港において、明るい作業灯の照明のもと、乗り揚げた僚船の引き降ろし作業を終え、同港を出航する際、正船首至近に灯浮標の灯火を認めた場合、ケーソンの灯火を航泊禁止区域の灯火と見間違わないよう、目が暗さに順応するまでレーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。
しかし、同人は、ケーソンの灯火を航泊禁止区域の灯火と見間違い、視認する灯浮標の灯火を右舷に見て航過すれば狭い水路を航行できると思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、ケーソンに向首進行してケーソンとの衝突を招き、大勝丸の船首部を圧壊及びケーソン北東端部のコンクリートに欠損を生じさせるに至った。






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