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1999年(平成11年)

平成11年横審第3号
    件名
プレジャーボートラ プラージュ同乗者負傷事件

    事件区分
死傷事件
    言渡年月日
平成11年6月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

西村敏和、猪俣貞稔、長浜義昭
    理事官
藤江哲三

    受審人
A 職名:ラ プラージュ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
同乗者2人が腰椎圧迫骨折など

    原因
大型船の航走波に対する配慮不十分

    主文
本件同乗者負傷は、大型船の航走波に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年4月27日12時13分
愛知県伊良湖港北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートラ プラージュ
全長 10.37メートル
登録長 10.07メートル
幅 2.75メートル
深さ 1.03メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 169キロワット
3 事実の経過
ラ プラージュは、最大とう載人員12人のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、知人3人を乗せ、周遊の目的で、船首0.3メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成9年4月27日09時30分愛知県豊浜港を発し、伊勢湾を南下して知多半島南東方の篠島港及び渥美半島南西端の伊良湖港に順次寄港して観光したのち、12時00分ごろ伊良湖港を発進して、昼食をとるため師崎港に向かった。
ところで、ラ プラージュは、船首部にキャビン、中央部に操舵室及び船尾部に船尾甲板をそれぞれ配置し、キャビン上部は船首甲板となって周囲に手すりがあり、船首端のバウスプリット上にはアンカークラウンを前方に向けた状態でストックアンカーが据え付けられ、その後方には小型揚錨機が設置されており、また、操舵室上部には上部操縦席があり、右舷側に操舵ハンドル及び主機遠隔操縦装置があって、切り換えにより操舵室又は上部操縦席のいずれかで操船することができるようになっており、これまでA受審人は、年間4、5回の頻度で同船の船長として乗り組み、伊勢湾内を周遊していた。
A受審人は、発航時から上操縦室で椅子に腰を掛けて操船にあたり、同乗者1人を同操縦席の左舷側で見張りにあたらせ、適宜の針路で徐々に増速しながら伊良湖港港口に向かい、12時02分伊良湖港防波堤灯台から045度(真方位、以下同じ。)120メートルの地点において、同防波堤北端を航過したところで針路を343度に定め、機関を、全速力前進で毎分3,000回転のところ、毎分2,000回転の半速力前進にかけ、13.0ノットの対地速力で、手動操舵により師崎港港口に向けて北上した。
これより先、A受審人は、発航に際し、同乗者2人がバウスプリット上と揚錨機前方の船首甲板上に、それぞれ船首方向を向いて腰を下ろしているのを認め、海上は静穏であり、伊良湖港に至る間に航走中のフェリーなどが自船の近くを通過することがあったものの、航走波により船体が大きく動揺することはなく、また、これまでもそのような経験がなかったことから、操舵室や船尾甲板に移動するよう指示するまでもないと軽く考え、両同乗者に対し、手すりにしっかりとつかまっておくようにと告げ、両同乗者が手すりにつかまっていることを確認したうえで発航した。
12時13分少し前A受審人は、尾張野島灯台から182度1.8海里の地点において、中山水道を南下中の大型の自動車専用船(以下「大型船」という。)が自船の船首方約200メートルを左方に横切るのを認め、間もなく同船から発生した航走波に出合う状況となったが、一見してこの程度の航走波であれば、全速方で航走していないので、このままの針路及び速力で航走波に出合っても船首部が大きく上下動して同部にいる両同乗者に危険を及ぼすことはないと思い、速力を大幅に減じるなどして上下動を小さくするための措置をとらずに進行した。
こうして、A受審人は、大型船の船尾付近に群れ飛ぶかもめを眺めながら原針路、原速力のまま続航中、12時13分尾張野島灯台から183度1.7海里の地点において、航走波を乗り切ろうとしたとき、船首部に衝撃を受けて同部が大きく持ち上げられ、両同乗者が跳ね上げられたのを認め、急いでクラッチを中立にしたが効なく、船首部が波底に着水したとき、両同乗者が甲板上に打ち付けられて腰部などを強打した。
当時、天候は晴で風力2の西北西風が吹き、海上は静穏で、潮候は下げ潮の末期であった。
その結果、両同乗者が腰椎圧迫骨折などを負った。

(原因)
本件同乗者負傷は、愛知県伊良湖港から同県師崎港に向けて北上中、大型船の航走波に対する配慮が不十分で、速力を大幅に減じるなどの措置をとらずに進行して航走波に出合い、船首部が大きく上下動して同部にいた同乗者が跳ね上げられ、甲板上で強打したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、愛知果伊良湖港から同県師崎港に向けて北上中、同乗者が船首部にいる状況下、自船の前路を横切った大型船の航走波に出合う状況となった場合、船首部が大きく上下動するおそれがあったから、速力を大幅に減じるなどして同部の上下動を小さくするための措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同人は、一見してこの程度の航走波であれば、全速力で航走していないので船首部が大きく上下動することはないと思い、速力を大幅に減じるなどの措置をとらなかった職務上の過失により、そのまま進行して航走波に出合い、船首部が大きく上下動して同部にいた同乗者が跳ね上げられ、甲板上で腰部などを強打し、腰椎圧迫骨折などを負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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