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1999年(平成11年)

平成11年横審第21号
    件名
プレジャーボートササブネ同乗者負傷事件

    事件区分
死傷事件
    言渡年月日
平成11年6月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔、勝又三郎、河本和夫
    理事官
藤江哲三

    受審人
A 職名:ササブネ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
同乗者が左第3指遠位指節間関節離断傷

    原因
安全措置不十分(機関始動時)

    主文
本件同乗者負傷は、発進するために機関を始動する際の安全措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年8月17日12時00分
神奈川県逗子湾
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートササブネ
全長 3.15メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 55キロワット
3 事実の経過
ササブネは、製造者型式がGL3の、マリンジェットと呼称される、最大搭載人員3人のFRP製水上オートバイで、A受審人が一人で乗り組み、ウェークボーダー及び友人のBを乗せ、各人ともライフジャケットを着用し、ウエットスーツ、マリンシューズ及び手袋等は着用しないまま、水上レジャーの目的で、船首尾とも0.2メートルの喫水をもって、平成9年8月17日11時50分葉山灯台から009度(真方位、以下同じ。)1.4海里にあたる、神奈川県逗子海岸北端の係留地点を発し、ウェークボーダーを曳航して逗子湾内での航走を開始した。
ところで、水上オートバイは、我が国では、昭和61年にヤマハ発動機株式会社の技師によって初めて考案、設計されてマリンジェットの原型が確立されたものであるが、普及、発展するにつれて、水上オートバイの事故が増加の兆しを見せ、社会的に注目されるようになったことから、製造元は、水難事故防止のための指針として、機器取扱、操船要領の解説、同乗者、他船、付近遊泳者など周囲の人々との安全調和のほか身体保護のためライフジャケット、ウエットスーツ、マリンシューズ及び手袋など保護具の着用を推奨していた。
A受審人は、波打ち際から少し沖出ししたところで、ウェークボーダーを約14メートルの長さのスキーロープで曳航し、B同乗者に操縦させ、自らは後部座席でウェークボーダーの状況監視に当たり、11時53分機関が微速力から半速力に上がり、10.0ノット(毎時18.5キロメートル)の速力で葉山港に向けて南下し、同時56分少し前陸岸に接近したので折り返すこととして左旋回させたところ、同時56分葉山灯台から016度1.0海里の地点で、船首がほぼ180度回頭して北北西を向いたとき、ウェークボーダーが海中に転落したので、機関を停止させた。
そこで、A受審人は、自ら操縦に当たり、B同乗者を後部座席に座らせて流れたままになっているスキーロープを回収させ、11時57分機関の始動を試みたものの、
関のかかり具合が悪く、なかなか起動しなかったので、何回か試みた後、スロットルレバーを一杯に引いて始動することとしたが、機関の始動を行っていることは当然承知していることであるから十分に気をつけているものと思い、B同乗者に一声注意を促すなど安全措置をとらず、12時00分機関が起動して急発進したとき、後部座席で船尾方を向いて前かがみの姿勢でスキーロープを回収していたB同乗者が左手にスキーロープをコイル状に束ねた状態のまま落水した。
当時、天候は曇で風力2の東北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
この結果、B同乗者は、緊張したスキーロープが指先に略み、左第3指遠位指節間関節離断傷を負った。

(原因)
本件同乗者負傷は、逗子海岸沖において、ササブネがウェークボーダーを曳航中、同人が転倒して機関を停止後、再始動して発進する際、安全措置が不十分で、急発進したとき、同乗者が船尾で回収していたスキーロープを左手に束ねた状態のまま落水したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、逗子海岸沖において、同乗者に操縦させてウェークボーダーを曳航中、同人が転倒したので、機関を停止後、同乗者に流れたままになっているスキーロープを回収させながら機関を再始動して発進する場合、同乗者に対して、発進する旨一声注意を促すなど安全措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、機関のかかり具合が悪く、何回か試みており、機関の始動を行っていることは当然承知していることであるから十分に気をつけているものと思い、発進する旨注意を促すなど安全措置をとらなかった職務上の過失により、急発進したとき同乗者が落水し、その際、左手に束ねていたスキーロープが緊張して指先に絡み、左第3指遠位指節間関節離断傷を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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