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1999年(平成11年)

平成11年神審第10号
    件名
プレジャーボートフラフーラのり養殖施設損傷事件(簡易)

    事件区分
施設等損傷事件
    言渡年月日
平成11年12月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

須貝壽榮
    理事官
野村昌志

    受審人
A 職名:フラフーラ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
のり養殖施設の浮標に取り付けたロープの切断等の損傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件のり養殖施設損傷は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年9月20日12時00分
兵庫県東播磨港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートフラフーラ
総トン数 7.9トン
登録長 9.43メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 235キロワット
3 事実の経過
フラフーラは、船体中央部に船橋及びキャビンを配置した2基2軸のFRP製プレジャーボートで、A受審人が単独で乗り組み、同人の兄及び友人など5人を乗せ、たこ釣りの目的で、船首尾とも0.85メートルの喫水をもって、平成10年9月20日10時30分兵庫県東播磨港の南二見地区北側に位置する明石マリンポートと称する係留地を発し、同港航路東側の釣場に向かった。
ところで、同釣場の東方海域には、当時、のり養殖施設がやや東西に長い六角形に設置されており、東播磨港別府東防波堤灯台(以下「別府東防波堤灯台」という。)から137度(真方位、以下同じ。)2,050メートルの地点が北西端で、同地点から244度700メートル、以下順次連続して215度850メートル、170度1,200メートルへと延びた地点が南西端となっていた。そして、北西端から113度2,600メートル、南西端から117度2,700メートルへと延びた各地点に囲まれた区画の周縁には、浮標が多数取り付けられていた。

A受審人は、発航後、南二見地区西側と対岸の新島地区との間の水路を通航して南下し、10時45分目的の釣場に至り、機関を中立回転にかけ、直径16ミリメートルの化学繊維製の錨索により、船首から重さ5キログラムの錨を海中に吊り下げた状態で漂泊を始め、同乗者に釣りを行わせた。
この時点で東に流れる潮流があり、A受審人は、自船の東側であまり離れていないところに、のり養殖施設が設置されているばかりでなく、付近に数隻の釣船が出ていたので、これらに注意を払わなければならず、また、船体が流されると潮昇りする必要があることから、自身は釣りを見合わせていた。
その後、A受審人は、船体が東方に流されると、その都度錨を揚げて潮昇りを行い、11時30分別府東防波堤灯台から157度1,630メートルの、のり養殖施設の北西端から西方740メートルの地点で3回目の潮昇りを終え、船首から錨を海底に接しないように5メートルばかり吊り下げ、船首を南西に向けて機関のクラッチを中立としたとき、左舷方一帯に同施設が設置されているのを認めた。

やがて、折からの弱い東南東風と東流との影響により、船首を090度に向け0.8ノットの対地速力で同方向に船体が流される状態となり、11時50分A受審人は、のり養殖施設の北西端に向首する態勢で250メートルに接近していたとき、同乗者の1人が船酔いしたので、船橋に入って同人の介抱を始めたが、これに気を取られ、まだ距離が十分あるものと思い、同施設との接近状況を確かめて船位の確認を行わなかった。
こうして、A受審人は、のり養殖施設に船体が寄せられていることに気付かずに介抱を続け、11時59分半船僑から船首方を見たとき、至近に同施設の浮標を認め、急いで船僑から飛び出して船首に赴き、電動ウインドラスにより錨を巻き揚げようとしたが、あわてて錨の揚収に手間取っているうち、12時00分別府東防波堤灯台から137度2,050メートルの地点において、フラフーラは船首を090度に向け、0.8ノットの対地速力で同施設の北西端に乗り入れた。

当時、天候は晴で風力2の東南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、付近には1.0ノットの東流があった。
その結果、のり養殖施設は、浮標に取り付けたロープが切断するなどの損傷を生じ、のち損傷部分ば取り替えられた。一方、フラフーラは、プロペラに同ロープが絡まって航行不能となり、地元の漁船によって発航地に引き付けられた。


(原因)
本件のり養殖施設損傷は、東播磨港の航路東側海域において、たこ釣りのため漂泊中、船位の確認が不十分で、潮流により同施設に乗り入れたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、東播磨港の航路東側海域において、たこ釣りのため漂泊中、船酔いした同乗者を介抱する場合、東に流れる潮流があるうえ、自船の東側にはのり養殖施設が設置されていたから、同施設に乗り入れないよう、これとの接近状況を確かめで船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、まだのり養殖施設までは距離が十分あるものと思い、船酔いした同乗者の介抱に気を取られ、これとの接近状況を確かめて船位を確認しなかった職務上の過失により、潮流に流されて同施設に乗り入れ、浮標に取り付けたロープを切断するなどの損傷を生じさせ、自船のプロペラに同ロープを絡ませて航行不能に陥らせるに至った。






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