![](0168.files/ecblank.gif) |
(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年4月27日11時00分 宮城県塩釜港仙台区 2 船舶の要目 船種船名
貨物船第二十五寶榮丸 総トン数 648トン 全長 48.20メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
882キロワット 3 事実の経過 第二十五寶榮丸は、船首部にクレーン装置及び船尾部に船橋が設けられた砂利採取運搬に従事する箱型鋼製貨物船で、塩釜港仙台区向洋地区岸壁築造工事現場に基礎用裏込材の割栗石(以下「割栗石」という。)の運搬投棄作業に当たっていたところ、A受審人ほか6人が乗り組み、割栗石800トンを載せ、船首2.80メートル船尾3.70メートルの喫水をもって、平成11年4月27日05時30分宮城県石巻港日和ふ頭を発し、同岸壁築造工事現場に向かった。 向洋地区岸壁築造工事は、既設の高砂ふ頭岸壁東端と向洋ふ頭との間に岸壁を設けるもので、既に高砂ふ頭岸壁東端から約150メートルまでの間には2メートル幅の2列のパイル及び鋼管矢板が打ち込まれて、同列間への割栗石投棄作業の段階に入っていた。そして、同工事区域が中央航路に面していたことから、同工事境界区域の標識として高砂ふ頭岸壁東端部から40メートル沖にあたる、塩釜港仙台船だまり防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から208度(真方位、以下同じ。)300メートルの地点に、黄色塗装の簡易灯標(以下「A灯標」という。)更に同地点からパイル列に沿って東100メートル及び同150メートルの各地点に簡易浮標(以下港口に向かって順に「B及びC浮標」という。)がそれぞれ設置されていた。 ところで、A受審人は、既に同工事現場のパイル列に入り船左舷付けに接舷して割栗石の投棄作業を3回行っていた。そして、その接舷操船は、A灯標とB浮標との間に向かって進行したのち、B浮標沖に至って右舷船尾錨を、続いてA灯標沖まで進出して同船首錨をそれぞれ投じ、続いてバウスラスタ及び機関を前後進に繰り返し更に舵を併用してパイル列にほぼ平行した態勢で両標識間の内側に接近し、その後船尾から錨搬出用小型補助船(以下「アンカー船」という。)で船尾錨をパイル列際に運んで投下させ、また船首からは高砂ふ頭岸壁東端部に係留索をとり、同錨と索を徐々に巻き込んで接舷させるものであった。 こうして、08時05分A受審人は、仙台区港内に至り、工事現場への接舷待ちのため防波堤灯台から074度800メートルの地点に投錨して待機した。10時半過ぎ着岸の連絡を受けて直ちに揚錨を開始し、同時40分同地点から錨路を240度に定め、機関を微速力前進にかけて3.0ノットの速力でA灯標とB浮標との間に向けて進行した。 10時50分A受審人は、B浮標まで100メートルに接近したところで機関を停止して前進行きあしで続航し、防波堤灯台から189度240メートルにあたる、同浮標から40メートル沖に達したところで右舷船尾錨をさらにA灯標から40メートル沖のところに同船首錨をそれぞれ投じた。その後バウスラスタ及び機関を使ってA、B両標識の間を経てパイル列に接近し、同時57分同パイル列に対して船首を10度沖に向け船尾が20メートルに近付いたところで、アンカー船で船尾錨をパイル列際に運ばせて投下させようとした。 ところが、A受審人は、折から風力3の南東風を左舷後方から受ける状況で、A、B、Cの各漂識が設置された同築造工事区域の狭い水域内での接舷作業であったが、それまでと違って船尾錨の搬出作業の遅れと船首からの係留索の送出作業などに気を取られ、A灯標などの標識に対する監視を十分に行わなかったので、風潮流の影響を受けるなどしてわずかな前進行きあしをもってA灯標に近付いていることに気付かず、バウスラスタ及び機関を使用するなどして同灯標を避けなかった。 11時00分少し前A受審人は、船首配置に就いていた一等航海士から突然機関の後進を求める連呼を聞いてA灯標に迫っていることに気付き、急いでバウスラスタを左一杯続いて機関を全速力後進にかけたが及ばず、11時00分防波堤灯台から208度300メートルの地点において、286度を向首したとき、わずかな前進行きあしで右舷船首部がA灯標に接触した。 当時、天候は曇で風力3の南東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。 その結果、船体には損傷を生じなかったものの、A灯標の防護枠等に曲損を生じ、のち修理された。
(原因) 本件簡易灯標損傷は、塩釜港仙台区において、岸壁基礎石材の投棄のため築造中の向洋地区岸壁に接舷する際、船首方の同築造工事境界区域標識の簡易灯標等に対する監視が不十分で、同灯標を避けなかったことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、塩釜港仙台区において、運搬してきた岸壁基礎石材を築造中の向洋地区岸壁基礎パイル列間に投棄するため同パイル列に接舷する場合、簡易灯標等の標識が設置された狭い同築造工事区域内での接舷作業であったから、同簡易灯標等の標識に対する監視を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、接舷のためのアンカー船による船尾錨の搬出作業の遅れと船首からの係留索の送出作業などに気を取られて、同簡易灯標等の標識に対する監視を十分に行わなかった職務上の過失により、船首方の簡易灯標に向かって接近していることに気付かず、これを避けないまま進行して、同簡易灯標損傷を招き、工事用簡易灯標防護枠等に曲損を生じさせるに至った。 |