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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年仙審第13号
    件名
漁船五号祐光丸養殖施設損傷事件

    事件区分
施設等損傷事件
    言渡年月日
平成11年7月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄、上野延之、内山欽郎
    理事官
大本直宏

    受審人
A 職名:五号祐光丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)
    指定海難関係人

    損害
わかめ養殖施設を損傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件養殖施設損傷は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年11月26日06時35分
宮城県気仙沼湾
2 船舶の要目
船種船名 漁船五号祐光丸
総トン数 74.83トン
全長 33.25メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 286キロワット
3 事実の経過
五号祐光丸は、かつお一本釣り漁業に従事する船尾船橋型FRP製漁船で、A受審人及び甲板員Bほか16人が乗り組み、三陸沖合で操業を行い、度々気仙沼港に水揚げしていたところ、漁期終了に伴う回航の目的で、船首1.3メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、平成9年11月26日06時00分同港を発し、宮崎県目井津漁港に向かった。
ところで、気仙沼湾は、御崎岬と岩井埼との湾口から形成され、その中央に位置する大島に2分された東西2つの湾から成り、気仙沼港が西湾の奥にある。西湾両岸沿いには養殖施設が設置されて水路が狭められ、更に同湾々口には岩井埼灯台から129度(真方位、以下同じ。)1,200メートルを東端とする西側浅礁域には牡蛎(かき)養殖棚の設置区域が設けられて海図第1099号にも記載されてあった。当時、同水域を含む岩井埼灯台からそれぞれ131度1,220メートルを東端として、057度470メートル、176度710メートル及び162度1,880メートルの各地点を順次結ぶ線によって囲まれた広い水域にわかめ養殖施設が設置されていた。
A受審人は、これまでの気仙沼港への水場げから、西湾両岸の養殖施設で水路が狭められていること及び岩井埼南沖には養殖施設が設置されていることを知っており、外洋に出る針路法を海図で調べるなどして気仙沼湾湾口の水路調査を行わなかったものの、西湾内の水路に沿って岩井埼と黒崎島との中間に向けて南下し、そのまま外洋に出るようにしていた。
離岸後、A受審人は、水路幅の狭い湾内を航行するに際し、折りから雨模様の状況下で操舵室内では船首方の死角が大きいので、見張り員のB甲板員を置いて、自らはレーダーなと操船機器が備わったアッパーブリッジで船橋当直に当たり、06時24分気仙沼西湾灯浮標から107度100メートルの地点に達したところで、針路を岩井埼と竜舞埼との中間に向く160度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて9.5ノットの速力で西湾を南下した。
ところが、A受審人は、湾口に近づくに伴って沖合から南東寄りのうねりの影響を受けるようになって縦揺れを繰り返しながら岩井埼灯台に並航したころ、漁労長から陸岸に寄せて揺れを軽減するように要請を受けた。そこで、06時32分半岩井埼灯台から066度800メートルの地点で、縦揺れを極力抑えるために船首を南に向けて外洋に向かおうとしたとき、これまでと違って早目の転進であったが、海図によって前示養殖施設の設置区域などの水路調査を十分に行うことなく、同養殖施設の東端が同灯台の真南方向に位置していると思い、針路を180度に向けたところ、同養殖施設の東部分に向首するようになったが、これに気付かないまま操舵室に戻った。しかし、なおも海図によって水路調査を行わないまま続航し、海図台に向かって日誌の記入を始めようとしていたところ、06時35分岩井埼灯台から120度840メートルの地点において、同わかめ養殖施設の北東部に原針路、原速力のまま進入し、これを乗り切った。
当時、天候は雨で風力3の南東風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、南東寄りのうねりがあり、視程は約1海里であった。
A受審人は、わかめ養殖施設に進入したことに気付かずに航行を続けていたところ、見張り中のB甲板員から前路にビン球が浮いている旨の報告を受けたものの、06時40分岩井埼灯台から148度1,360メートルの地点で船体が停止した。
その結果、船体には損傷を生じなかったが、わかめ養殖施設に損傷を生じ、のち修理された。

(原因)
本件養殖施設損傷は、気仙沼湾を出航する際、水路調査が不十分で、同湾口付近に設置されたわかめ養殖施設設置区域に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、気仙沼港から宮崎県に向けて回航する際、気仙沼湾の西湾を南下して外洋に向かう場合、同湾湾口西側浅礁域に養殖施設が設置されていることを知っており、これまでと違って早目の転進であったから、同域に乗り入れることのないよう、海図によって水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、岩井埼灯台の真南方向に同養殖施設区域の東端が位置して同灯台に並航したところで真南に外洋に向かうことができると思い、海図によって水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同灯台から南東0.7海里沖まで拡延している浅礁域に養殖施設区域が設けられていることに気付かず、同施設東部分に乗り入れて、わかめ養殖施設を損傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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