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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年長審第61号
    件名
引船第十二興真丸被引起重機船第二興真号押船第十八興真丸送電線損傷事件

    事件区分
施設等損傷事件
    言渡年月日
平成11年2月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

坂爪靖、安部雅生、保田稔
    理事官
山田豊三郎

    受審人
A 職名:第十二興真丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
送電線1本が切断されて送電が一時中断

    原因
送電線に対する配慮不十分(レーンのジブを立てたまま航行)

    主文
本件送電線損傷は、送電線に対する配慮が不十分で、クレーンのジブを立てたまま航行したことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月20日09時28分
長崎県大中瀬戸
2 船舶の要目
船種船名 第十二興真丸 起重機船第二興真号
総トン数 16トン
登録長 11.92メートル 40.00メートル
幅 18.00メートル
深さ 3.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 264キロワット
船種船名 押船第十八興真丸
登録長 9.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 22キロワット
3 事実の経過
第十二興真丸(以下「興真丸」という。)は、鋼製引船兼交通船で、A受審人が1人で乗り組み、第二興真号(以下「興真号」という。)の船首に長さ約20メートルの曳航索をとって船尾に引き、船首1.00メートル船尾2.80メートルの喫水をもって平成9年9月20日08時00分長崎県野母港を発し、同県大中瀬戸を経由するつもりで長崎港に向かった。
また、興真号は、船首部に吊り上げ荷重120トンの全旋回式ジブクレーン(以下「クレーン」という。)1基を備えた非自航型鋼製起重機で、B指定海難関係人が船団長としてほか3人と乗り組み、興真丸及び第十八興真丸(以下「十八号」という。)を指揮し、同月初めごろから野母港北東方約1.5海里の地点で、防波堤築造の基礎工事作業に従事していたところ、同月19日同作業が終了したので、甲板上に敷いていた鉄板を陸揚げすることとし、クレーンのジブを船尾側に仰角約61度として立てたまま、その先端が水面上約35.6メートルとなった状態で、船首1.30メートル船尾0.70メートルの喫水をもって、前示のとおり興真丸に曳航されて長崎港に向かった。
ところで、大中瀬戸は、沖之島と香焼島との間に存在し、可航幅が約250メートルの最狭部付近には、海図記載上の高さ28メートルの送電線6本がほぼ東西に横切って架かっていた。
発航後、B指定海難関係人は、海上が平穏で目的地までの航程も短かったので、通常興真号の揚錨船として使用している十八号に乗組員の1人を乗り組ませ、同船の船首部を興真号の船尾部に当てて押させ、3隻で引船列を構成して長崎港に向かった。
08時10分A受審人は、1人で操舵操船に当たり、野母北浦灯台から047度(真方位、以下同じ。)200メートルの野母港港外に出たところで、通航経験がある大中瀬戸のほぼ中央に向けて針路を017度に定め、機関を全速力前進にかけて4.8ノットの速力とし、手動操舵で進行した。
一方、B指定海難関係人は、それまでに大中瀬戸を数十回通航した経験があったので、同瀬戸に送電線が架かっていることは十分に承知していたが、連日の作業に忙殺されていたこともあって、送電線のあることを失念し、発航後速やかにクレーンのジブを倒して格納しないで08時30分ごろから自室にこもって作業日報等の書類整理を始めた。
09時16分ごろA受審人は、大中瀬戸西灯台から189度1,670メートルの地点に達したとき、船首方約1,700メートルのところに、送電線を視認し、後方を見ると興真号のクレーンのジブが立てられた状態のままであるので不安を覚えたが、なんとか通航できるものと思い、速やかにB指定海難関係人に同ジブを倒すよう進言することなく、そのまま続航した。
09時27分引船列は、大中瀬戸西灯台から125度210メートルの、大中瀬戸南口に達したとき、反航船を避航するため針路を右に7度転じ、024度として進行中、09時28分大中瀬戸西灯台から085度250メートルの地点において、クレーンのジブの先端付近が送電線に引っ掛かった。
当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
A受審人は、直ちに機関を停止し、興真号の甲板上で作業をしていた甲板員に大声で叫びながら右手で指さしてクレーンのジブが送電線を引っ掛けたことを知らせ、B指定海難関係人が甲板上に姿を現わしたのを認めたのち、興真号が自船に接近してきたので機関を前進にかけたり停止したりしているうち、同指定海難関係人が送電線が外れたと手で合図をしてきたので、送電線が切断したことに気付かないまま目的地に向けて進行した。
A受審人及びB指定海難関係人は、長崎港で鉄板を陸揚げしたのち、クレーンのジブを倒し、再び大中瀬戸を通航して同日15時15分野母港に入港したところ、長崎海上保安部から事故の発生を知らされた。
その結果、興真号には損傷はなく、送電線6本のうち最下段の1本が切断されて伊王島への送電が一時中断されたが、1分後に海底ケーブルに切り替えられて送電が再開され、切断した送電線は、のち修理された。

(原因)
本件送電線損傷は、長崎県野母港から大中瀬戸経由で長崎港へ向けて航行する際、同瀬戸に架けられた送電線に対する配慮が不十分で、クレーンのジブを立てたまま同瀬戸を航行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、引船の船長が船団長にクレーンのジブを倒すよう進言しなかったことと、船団長が、同ジブを倒して格納しなかったこととによるものである。

(受審人等の所為)
A受審人は、興真号を曳航して長崎県野母港から大中瀬戸経由で長崎港へ向けて航行中、同瀬戸に送電線が架かっているのを視認した場合、興真号のクレーンのジブが立てられたままであったから、同ジプが送電線と接触しないよう、速やかに船団長に同ジブを倒すよう進言すべき注意義務があった。しかるに、同人は、なんとか通航できるものと思い、速やかに船団長に同ジブを倒すよう進言しなかった職務上の過失により、そのまま進行して送電線との接触を招き、送電線6本のうちの1本を切断させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人が、送電線の架けられた大中瀬戸経由で長崎港へ向けて航行する際、送電線の存在を失念し、クレーンのジブを倒して格納しなかったことは、本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、本件発生後、作業終了時には必ずクレーンのジブを倒して航行するなどの安全運航に留意している点に徴し、勧告しない。

よって主文のとおり裁決する。






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