日本財団 図書館




1999年(平成11年)

平成10年函審第50号
    件名
漁船第十八清宝丸機関損傷事件

    事件区分
機関損傷事件
    言渡年月日
平成11年11月30日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大山繁樹、酒井直樹、大石義朗
    理事官
里憲

    受審人
A 職名:第十八清宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
クランク軸、シリンダブロックの2番主軸受部、1番シリンダの連接棒大端部軸受、潤滑油ポンプなど焼損

    原因
主機油受内の潤滑油量点検不十分

    主文
本件機関損傷は、主機油受内の潤滑油量点検が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年12月28日18時00分
青森県津軽半島西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八清宝丸
総トン数 19.57トン
登録長 14.86メートル
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 481キロワット
回転数 毎分1,940
3 事実の経過
第十八清宝丸(以下「清宝丸」という。)は、昭和50年12月に進水し、いか一本釣り漁業などに従事するFRP製漁船で、主機としてコマツディーゼル株式会社が製造したEM679A−A型と呼称するディーゼル機関を装備し、シリンダには船首側を1番として順に番号を付し、操舵室操縦スタンドに設けられた主機計器盤には、潤滑油圧力計、冷却水温度計などの計器とともに、潤滑油圧力が低下したときなどに作動する警報装置が組み込まれていた。
主機の潤滑油系統は、総油量133リットルで、クランク室底部の油受の潤滑油が、直結潤滑油ポンプによっで吸引・加圧され、同ポンプ付圧力調整弁で調圧されて潤滑油冷却器、フィルタを経たのち主管に至り、クランク軸、カム軸、調時歯車装置、弁腕装置、過給機などへ注油される軸受系統と、主管手前からピストンクーリングバルブを経由してピストン冷却主管に入り、各シリンダのシリンダライナ下方に設けられたノズルから噴出してピストン内面を冷却するピストン冷却系統とに分かれへ各部を潤滑あるいは冷却したのち油受に戻るようになっていた。なお、潤骨油ポンプは、容量が毎分180リットルの歯車式ポンプで、油受内部のシリンダブロック船首側に吊り下げて取り付けられ、吸入管の先端が油受中央の底面に沿って開口していた。

主機の潤滑油圧力は、潤骨油ポンプ付圧力調整弁によって、定格回転時における主管の油圧が4.4キログラム毎平方センチメートル(以下「キロ」という。)に調整され、その油圧が3.0ないし3.6キロに低下すると同調整弁が全閉となって、潤滑油ポンプの全吐出量が軸受及びピストン冷却系統に送り出されるようになっており、一方ピストンクーリングバルブは、フィルタ出口側の圧力が1.2ないし1.6キロ以上で開弁するようになっていた。
また、操舵室の主機潤滑油圧力計は、文字盤の直径が5.0センチメートルの円形状のもので、同盤の1.0ないし6.0キロの間が緑色、0ないし1.0キロの間と6.0ないし10.0キロとの間が赤色にそれぞれ色分けされており、そして、潤滑油圧力低下警報装置は、運転中に油圧が低下して1.3キロ以下になると赤ランプが点灯し、警報ブザーが鳴るようになっていた。

A受審人は、昭和62年3月に中古で清宝丸を購入して船長で乗り組み、操船のほか機関の運転管理にも当たっていたところ、平成8年6月12日操業の目的で鳥取県沖合を航行中、主機の潤滑油フィルタケーシングに破口を生じ、潤滑油が漏洩してクランク軸が焼損したので、鳥取県境港において主機を前示のものに換装することになった。
ところで、換装することになった主機は、平成元年2月に製造され、同年9月から平成8年4月まで毎年10箇月間底引き網漁に従事していた漁船に搭載していたもので、青森県小泊村の機関整備業者が海水ポンプのインペラーを新替えするなどの簡単な整備をした後、境港へ搬送して主機の換装工事に当たり、過給機、空気冷却器などは損傷機関のものを再使用し、主機据付け後警報装置を作動させて異状のないこと、海上試運転を行って回転数毎分1,800のときの潤滑油圧力が4.0キロであることなどを確認し、また、それ以外の運転諸元に格別異状が見当たらなかったことから、ピストン抜き、潤滑油ポンプなどの開放整備を行わずに同工事を完了し、その後A受審人は、日本海沿岸沖合を北止しながら操業を繰り返し、約360運転時間毎に主機の潤滑油及び潤滑油フイルターの交換を行うなどしてその運転管理に当たっていた。
清宝丸は、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首1.5メートル船尾2.3メートルの喫水をもって、平成8年12月28日14時00分青森県小泊漁港を発したが、同受審人は、出港前に主機の始動に当たった際、油受の潤滑油量が不足していることはあるまいと思い、同油量点検を行わなかったので、同油量が著しく減少した状態であることに気付かず、始動後、操舵室の主機計器盤を一見したのみで、出港操船に引続き単独船橋当直に当たった。
16時30分清宝丸は、同港西方沖合の漁場に達して魚群探索を行った後、17時55分シーアンカーを投入し、主機を回転数毎分1,800にかけ動力取出軸のエアクラッチを嵌(かん)合して集魚灯用発電機を運転し、同灯の点灯を開始したところ、潤滑油ポンフが油量不足であったところへ船体の動揺に伴って間欠的に空気を吸引し始め、そこへ集魚灯点灯時の負荷変動の影響が加わり、1ないし3番主軸受及び1、2番クランクピン軸受が潤滑不良となって焼損し、18時00分小泊岬南灯台から真方位265度12.5海里の地点において主機が異音を発した。

当時、天候は曇で風力4の南西風が吹き、海上は平穏であった。
A受審人は、操舵室で集魚灯スイッチを投入して間もなく異音に気付き、エアクラッチを切って機関室へ急行する途中、主機の回転低下とともにクランク室ミスト抜き管からの多量の煙を認めて同機を停止し、僚船に救助を求めた。
清宝丸は、来援した僚船に引航されて小泊漁港へ帰り、修理業者による調査の結果、クランク軸のほか、シリンダブロックの2番主軸受部、1番シリンダの連接棒大端部軸受、潤滑油ポンプなども焼損しており、修理費の都合から主機を中古機関に換装した。


(原因)
本件機関損傷は、出漁に先立って主機を始動する際、油受内の潤滑油量点検が不十分で、同油量が著しく減少した状態のまま出漁し、操業中に潤滑油ポンプが空気を吸引して主軸受などが閏滑不良となったことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、出漁に先立って主機を始動する場合、潤滑油量不足状態で運転されることのないよう、油受内の潤滑油点検を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、油受の潤滑油量が不足していることはあるまいと思い、同油量点検を十分に行わなかった職務上の過失により、同油量が著しく減少した状態のまま出漁し、操業中に潤滑油ポンプが空気を吸引する事態を招いてクランク軸、シリンダブロックなどを焼損させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION