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汎用電子乗車券の導入促進のための調査研究

 

1. 調査の概要

 

これまでの我が国におけるICカード乗車券(汎用電子乗車券)の実用化に向けた取り組みは、「汎用電子乗車券開発検討委員会」において、実用技術の確立を目指し、汎用電子乗車券システムが備えるべき技術的要件を明らかにする観点から我が国の交通事情に基づいた利用概念について検討が行われるとともに、「汎用電子乗車券技術研究組合」において、カード及びシステム機器、システムについて実証実験を含めた技術開発が行われた。その結果、汎用電子乗車券には、交通利用者の利便性の向上、交通事業者の業務効率化・多様なサービス展開の可能性等の利点が備わっており、これまでの技術開発や営業路線での実証実験等を通じて、これらの利点を実現する能力は技術仕様の面において十分に確保されるまでに至った。

本年度の調査研究においては、このような利点を兼ね備えた汎用電子乗車券の普及を促進することを目的として、これまで定性的に理解され、技術的に用意されている汎用電子乗車券システムの利点について、第2章で導入に対する費用対効果、第3章で導入による社会的効果を、具体的な条件設定を行うことにより、定量的に示した。この結果、バス、鉄道両方において、費用対効果は現れ、特に鉄道においては汎用電子乗車券専用機の設置比率が高くなる程、効果が大きくなることが示され、更に、システムを導入する場合、既存の駅務機器で比較的新しいものについては改造により汎用電子乗車券に対応させることで初期投資が抑えられ、その後の費用対効果が現れやすいという結果が得られた。一方、社会的効果についても、バス、鉄道両方において、利用者の券買、精算、改札等に必要な時間については、汎用電子乗車券の利用率が高くなる程、短縮効果が顕著であり、特に鉄道の乗換時間や、駅の利用人数が普段よりも著しく大きくなるような場合には、効果が一層大きくなることが示された。

また、第4章では、汎用電子乗車券の標準仕様について日本鉄道サイバネティクス協議会で検討を行っているところであるが、本調査研究では、汎用電子乗車券技術研究組合での技術開発及び実証実験の成果を踏まえ、普及促進の観点から、日本鉄道サイバネティクス協議会との意見交換を行い、汎用電子乗車券システムの標準規格の策定に参画し、その策定状況をまとめた。

次に、第5章では、汎用電子乗車券の普及促進を目的とし、平成8年度から平成10年度にかけて、「汎用電子乗車券開発検討委員会」で検討したコンセプト、および今年度検討した定量的な費用対効果や社会的効果の結果を解説書にわかりやすくまとめた。

最後に、第6章では、本調査研究の成果のまとめと、交通事業者間でのカードの共通利用化、汎用電子乗車券の多機能化といった課題、展望をまとめた。

 

 

 

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