2-2. 海象
(1) 沖縄本島付近
沖縄本島付近は主流を東シナ海に持つ大きな黒潮海流中にあり、水温も黒潮に大きく影響されている(表面水温:冬期20°C台、夏期29°C台)。海流は定常流として沖縄本島の北西80〜100海里(1海里=1852m)に黒潮本流がある。本島付近の海流は不安定で季節変化が大きく、本島の太平洋岸より石垣島に至る海域に左旋流(0.5〜2ノット1)を伴う規模の小さい冷水渦2(直径約120海里)が存在していることが多くみられる。
本島付近の潮汐は、日本列島太平洋岸とほぼ同じで大潮の干満差は約2mであり、日潮不等3はあまり大きくない。潮流は、海底地形に左右されるが、一般的に本島太平洋岸よりも東シナ海沿岸に強い流速を持つ海域が多く見られる。
(2) 慶良間列島付近
この海域は世界最大級の透明度(30m以上)を有している。流れが強く、海水の交換率が非常に良いと考えられる。事実、慶良間海峡には最大2.5ノットという強流域があるほか、島々の海峡部ではこれに準じる強流域が多数ある。潮汐・水温変化等は、沖縄本島海域とほぼ同じである。
(3) 宮古列島付近
水温は冬場でも20℃より下がることはほとんどなく、年間を通じて21〜29℃の範囲内にあり、夏場は30℃程になることもある。黒潮本流は宮古島の北西約100km付近を定常的に1〜2ノットで流れているが、島の付近での流れは不安定で、地形や季節等の変化に大きく左右される。
潮汐は那覇港を基準にして、潮時差は-15分程度、また、潮高比は0.84倍程度となっている。潮流については、宮古島の東平安名埼沖や多良間島付近で2ノット程度の流れが観測されている。
(4) 八重山列島付近
水温は冬場でも20℃より下がることはなく、夏場は30℃程になることがある。黒潮本流は台湾と西表島の間を北上し、尖閣列島付近より北東方に流れ、流速は1〜2ノット程度となっている。黒潮本流域以外の列島付近の海域では、季節的変化等により流れは複雑な流況を示している。
潮汐については、那覇港を基準にして、潮時差及び潮高比は石垣島では約+10分、0.77倍、西表島では約+25分、0.80倍、与那国では約+15分、0.75倍程度になっている。
(参考資料:第十一管区海上保安本部、1999、沖縄の海洋情報ハンドブック)
1ノット:1ノット=1時間に1海里を進む速度。
2冷水渦:周囲の海水温度より比較的低い海面に出来る渦。遠州灘沖の冷水渦が有名。
3日潮不等:相次ぐ2つの高(低)潮は、同一の日でも必ずしも同じ高さではなく、また相次ぐ高(低)潮の間の時間には差があるのが普通である。これを日潮不等と呼んでいる。