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私にとって人生で最初で最後の人体解剖学実習は、様々なことを学ばせてくれた。それまで私の解剖学の知識は教科書の中だけにとどまっていたわけだが、それらが現実に目の前にあることに私は素直に感動する事ができたし、解剖学の奥の深さを少し知った気がした。

また、他にも人間の命と死という事についても教えられた。人の命が何物にも代え難い程大切なものであるという事は、当たり前の事として、私もわかっているつもりでいた。しかし、何不自由することなく温室の中で育った私は、むろん命の危険を感じることなど皆無で、人の命の尊厳ということに対する認識が希薄であったように思う。そんな私の姿勢を改めて正してくれたのは、他でもなくこの解剖学実習という貴重な経験だった。

また、私はこの実習で、死というものについてより深く考える機会を得た。私が今まで人間の(特に身内の)死に対面して感じてきた、悲哀とか悲傷とかいう感情を超越して、死をもっと客観的にとらえようという努力をした。そのことによって、死がいかに壮絶なものであるか、また、それに立ち向かって行く人の助けとなるべく、将来医療に携わる事になる者の一人として、私には重大な責任がある事を知った。そして、私がこの将来に向けて、今現在進みつつあることを感謝し、また誇りに思えた。これから私はこの思いを大切に日一日を努力したいと思う。

最後に、私が解剖学実習を終了するにあたり、ご献体された杉山さんとその家族、解剖学教室の諸先生方、私の実習班のメンバー、そして私をこの世界に送りこんでくれた両親に心から感謝したいと思う。

 

 

 

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