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(1-3) 社会との関わり

社会人の継続教育

従来、MBA取得などが主流だった大学院における社会人の継続教育が、工学分野でも議論されるようになってきた。この背景にはいろいろな要因があるが、造船に関して社会人の修士、博士の学位取得に対する要請がどの程度あるのか調査する必要があろう。この際、大学で提供できる教育プログラムは現状では基礎学術に関するものが主体であろうと思われるが、一方社会人学生は実践的な教育プログラムを指向する可能性が高く、このままでは有効に機能しない可能性が高い。社会人コースは、大学・国研・産業界の連携プロジェクトとして企画し、講師陣に国研や企業からの多彩な人材を配置しすることが肝要である。また、修了後には学位とともに現在検討が進められている技術者資格認定にも有利な取扱がされるような仕組を立案すべきである。

学生のインターンシップ

造船界では従来から学生の工場実習という形で産業界との連携による教育プログラムを実施しているが、これとは別に大学院レベルの学生が国や産業界のプロジェクト研究に長期的に参加することを支援する奨学金支給を含む制度を検討する必要がある。学生にとって先端的プロジェクトへの参加それ自体が自己の研究にとってメリットがあると同時に視野を拡げ、また技術者としての規律を身に付ける良い教育訓練の機会となるであろう。

 

(2) 国の役割

(2-1) 技術者教育に関する国の基本的な役割について

課題の趣旨及び現状の問題点にも揚げられているように、変化する社会のニーズに対応した技術者教育の必要性が認識されており、このための船舶海洋工学の教育研究体制の質的及び量的な転換を目指した方策を検討することが望まれる。

このような課題に対し産業界、学会、政府による様々な取り組み方はあろうが、政府の果たすべき役割に関しては、これまで国会等での行政改革等の議論を通じた基本認識を踏まえれば、次のようにまとめられよう。

政府の基本的な立場としては、(i)単に造船業又は海洋関係産業の競争力を強化するための方策には国の資金的な関与はあり得ず、国はあるべき姿を提示する程度にとどめ、具体的方策は産業界の自主努力に委ねるべきであり、(ii)施策の効果が社会的に広く一般国民に及ぶ場合や国際的枠組みの中で国家としての対応行うべき場合など一定の範囲に限って国の関与はあり得る。実際のケースは(i)及び(ii)の中間が多いと思われるが、この場合には公益の程度により国の関与は定まってくる。

(2-2) 先進的研究プロジェクトによる若手技術者の育成

船舶又は海洋に関係する技術に関しては、一般的に言うと(i) 先端的、先駆的な高度な技術と(ii) 技能を中心とする建造技術に分類されよう。ここで(ii)の技能を中心とする建造技術は、一部の文化財的な取り扱いを行うべき場合を除いては、産業競争力の問題に帰結する場合が多い。これに反し(i)の先端的、先駆的な高度な技術については、これらの技術開発プロジェクトには、これからの国全体の問題や広く一般社会の福祉に貢献する場合が含まれる場合も含まれ、政府としても技術開発プロジェクトそのものに対する関与(国庫補助、開銀等融資、税制上の優遇措置等)があり得る。この場合において、国の関与は先進的研究プロジェクトそのものではあるものの、この技術開発に伴い若手技術者が育成される効果を見逃すことはできない。このような体制により、若手技術者そのものがレベルアップの機会を得ると共に、このような経験を通じ、その後の技術開発能力の向上も期待できる。

 

 

 

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