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SOLAS条約第II-2章(防火構造・消火設備)の全面改正

(注:ここで紹介しているSOLAS新II-2章案は今だ「案」の段階であり、今後変更する可能性があることに御留意頂きたい)

 

船舶艤装品研究所 吉田公一

日本造船研究協会 竹内智仁

 

1. はじめに

 

1.1. SOLAS第II-2章改正の経緯

現在の海上人命安全条約(SOLAS条約)第II-2章防火規則に関しては、船舶の火災事故が発生した際にその手当てを施す改正が度々行われて来た。その結果、規則が繁雑になって来ており、またその規定が仕様的であるため、新しい防火技術の導入が難しいものとなっている。そこで、第II-2章の防火規則を簡潔かつ応用性の広いものとすることが必要となり、国際海事機関(IMO)の防火小委員会(FP)第38回会議(1993年6〜7月)において、第II-2章の総合的改正作業の必要性が合意された(FP38/24, FP38/6/7:Italy, FP38/6/8:Sweden, FP38/6/14:Japan)。

IMOの海上安全委員会(MSC)第63回会議(1994年5月)はFP38の意見に合意し、SOLAS第II-2章防火規則の総合的見直しを開始することを決め、FPにその作業を委託した(MSC/63/23、MSC63/INF.13:Sweden)。

FPは、現SOLAS第II-2章を全面的に見直して、新II-2章を構築する作業をその第39回会議(1994年6〜7月)から開始した。この作業は、2000年2月のFP第44回会議に完成することを目標に、進められている。この改正案作成のためには、第II-2章の構成や規則の内容などの規則文書上の検討とともに、技術的な課題を実験的に究明する検討や調査も必要である。

 

1.2 RR73の活動

RR73においては、このIMOのMSC及びFPの動向に対処し、新II-2章に関する我が国としてのビジョンを定めてその内容を構築するために、平成7年度から平成8年度までRR733小委員会を設置し、さらに平成9年度からは「SOLAS/II-2章総合見直しWG」を設置して、SOLAS第II-2章構築のための調査研究を進めてきた。

また、FPは、SOLAS第II-2章の総合見直しを円滑に進めるために、コレスポンデンス・グルーブ(CG)を設立し、会議と会議の間の期間に新II-2章案を作成する作業を進めてきている。日本はこのCGの幹事を平成7年度から10年度まで引き受けてきた(平成7〜9年度は(財)日本海事協会の山本博氏、平成10年度は吉田公一)。平成11年度は米国のMr. Eberlyが幹事を引き継いでいる。

SOLAS条約第II-2章総見直しのため、RR73では、まず、規則の条文を詳細に分析し、個々の要件毎に、目的、適用範囲、コード化の可能性、機能要件化の可能性を検討した。その結果に基づき、規則を再構成し、新SOLAS条約第II-2章及びFire Safety Sysytems Code(現SOLAS条約第II-2章の要件の一部をまとめた強制コード)の草案を作成した。また、新SOLAS条約第II-2章の審議の過程においては、以下に示す通り、必要な調査・検討を実施した。

 

2. 新II-2章の方針及び組み立て

 

2.1 新II-2章構築の基本方針

現行のSOLAS第II・2章は、パートA:一般規則、パートB:旅客船に関する規則、パートC:貨物船に関する規則、パートD:タンカーに関する規則というように、船種毎に要件を記述する規則の書き方となっている。

 

 

 

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