2.6 知識共有の仕組みの検証と評価
ここまでに、システム技術を最大限活用して情報と知識の共有化を図り、造船業の高度なコンカレントエンジニアリングを支援する、新しいシステム環境を構築することとしての、新しい情報技術に基づく高度造船CIMのシステム的な全体像を、ACIMリファレンスアーキテクチャとして示した。このアーキテクチャは、高度造船CIMの開発研究の根幹であり、これを構成する各ソフトウェア機能を検討し実現して行くことが主たる作業である。
以下、リファレンスアーキテクチャの各構成要素の実現度を示し、最後に、全体として知識共有の仕組みの実現度を総括する。
(1) CORBAオブジェクト基本サービス群
市販CORBA製品を導入し、プロトタイプによる実験を通して、その利用技術を確立した。パフォーマンス的にも、ソフトウェアコンポーネントの粒度を極端に細かくしない限り、実用上問題ないことが確認できた。ただ、現状の市販CORBA製品が提供するサービス群は、OMGが示した仕様の一部を実現するにとどまり、OMGが目指す分散オブジェクト環境の姿には今一歩達していないが、今後、市販製品の機能向上に伴い、より柔軟で質の高い分散環境が実現できると期待される。
(2) GPME提供機能群
CORBA経由で、PMへアクセスするインタフェース機能は、高いレベルで実装されたので、PMの全情報にアクセスできるだけでなく、PMが持つ全メソッドが、ネットワーク経由で利用可能となった。また、PMを拡張した場合、きわめて容易にCORBA対応化できるシステムメカニズムを採用し、柔軟性を持たせることが出来た。
(3) ワークフロー管理機能群
設計協業支援を可能とする新しいプロセスモデルを開発し、これを利用した設計協業支援システムの基本部分を構築し、プロセスモデルにアクセスして情報を操作する、基本的なサービス群を実現した。プロセスモデルに関連する情報技術はなお発展中であり、プロセスモデルのライフサイクル全体を支援する、協業支援システムの実現は今後の課題とする。
(4) 造船業固有機能コンポーネント群
検証用アプリケーションに必要な機能と、実用上必要な共通機能を目標通り整備した。ただ、DFFは開発するアプリケーションによって、必要機能が洗い出される性格のものなので、各造船所における高度造船CIMの展開に伴って拡充されて行くことになる。展開のシナリオは造船所ごとに異なるので、共通的に整備することは困難で、造船所側の努力に期待しなければならない。