ソーシャルエコロジー
─生態系を中心に据えた自然、経済、社会のバランスあるまちづくり
「なぎさ海道」は海辺のまちづくりと言い換えることができる。
海辺のまちづくりは、海辺だけで成り立つものではない。河川の流域では流域全体で環境保護と人間の営みとをバランスよく考えた整備の方向が出されている。海辺においても、単に残された自然海岸の環境保護や護岸を取り払って自然海岸に戻す、という環境保護だけにシフトするのではなく、自然の海辺と人間との接点、そこでの産業活動も含めバランスのとれた開発が必要である。とりわけ、大阪湾の湾奥部に広がる低未利用地の再活用や、多自然居住地域でのエコロジカル・ディベロップメントが求められている。それは、生態系を中心に据えた、自然、経済、社会のバランスのとれたまちづくり(=ソーシャルエコロジー)と言えよう。
主体的な市民による地域マネジメント─参加のしくみと責任のあり方を示す
「なぎさ海道ワークショップ」においてはもちろんのことだが、「なぎさ海道基礎調査」でも海辺や水辺での様々な住民活動の掘り起こしを続けてきた。彼らの活動は、明らかに海辺や水辺の整備に影響を与えている。地域の中で自発的に集まり活動を続ける市民の集団(=シビル・ソサエティ)は、確実にまちづくりの主体として地域に働きかけ、まちを変える原動力となっている。またその結果、コミュニティビジネスヘと発展するものも出てきている。
このような動きを見ると、今までのようなやり方での大規模開発ではなく、地域の視点に立った住民参加によるまちづくりのあり方が求められていると言える。それは、住民の顔の見える集落単位の取り組みもあれば、河川流域全体をネットワークするものなど様々な規模があるが、市民のまちづくりへの参加にとどまらず地域運営に関わるしくみそのものを確立することが、「なぎさ海道」実現の第一歩となるのではないだろうか。
インターフェースとしての中間組織─つなぐ人・空間・資源の育成と支援
これまでの調査で、「なぎさ海道」には様々な豊かな資源があることがわかった。しかし、地元住民は資源の持つ魅力はもちろん、その組合せ方によって新しい活用の仕方があることに気づいてないケースが多い。住民主体のまちづくりや海辺での住民参加の際には、そうした既成概念にとらわれない、モノ、コト、人をつなげる人材、或いは拠点となる中間組織が必要である。
インターフェースとしての人・資源は、「なぎさ海道マスタープラン」で情報収集組織としてその必要性をあげた「なぎさ特派員」の概念を広げ、地域と知恵、地元住民と来訪者、資源と人間の営み等、公私を越えた関係を築けるコーディネーター役を意味する。(財)大阪湾ベイエリア開発推進機構並びに関係機関は、そうしたインターフェースとなる人材や中間組織の社会的保証人となり、彼らの活動を積極的に支援していくことが望まれる。