こうした動きを踏まえながら、近未来の海辺の生活、地域、産業の行方を探りました。また、もうひとつは、上記の淡路島を経由して京阪神とひとつなぎになった徳島県の玄関口である鳴門市、空の拠点を抱える松茂町、河川流域ネットワークによる地域の広がりがある徳島市のエリアです。自動車交通中心の広域交通基盤整備が進む中、フェリーの廃止により使われなくなった小松島市の港湾施設の今後のあり方も視野に入れ、調査を行いました。
地域の現状については、7〜45ページに詳しくまとめていますが、平成11年度の対象エリアにおける「なぎさ海道基礎調査」を総括すると、ふたつの地域の現況として次のような点が明らかになりました。
●海と山が近い自然環境を活かした「なぎさ海道」での営みが見られる
●自然環境を活かした観光・研究・産業の共存により、京阪神との交流が始まっている
●海辺・水辺での魅力ある資源がコンパクトに点在する
●暮らしと交流を支える海上ルート(海の路)が見直されている
●海辺・水辺の小道(トレイル)整備がすすめられている
●河川流域や海辺での住民主体の取り組みが盛んである
●市民参加による水辺の環境管理(アドプトシステムなど)が定着し始めている
本調査では、これらの現状を踏まえ、地域の可能性につながる視点として、
●大阪湾湾奥部との一体的環境圏の形成
●住民主体による「なぎさ海道」の創造
●インターフェースとなる人材・資源の発掘と育成
をあげました。さらに、地域の個性を生かした「なぎさ海道」実現への提案として次の三つの展開の可能性を提示しました。
●エコ・ラーニング・リゾートとして交流・発見・創造
●モビリティの快適性を重視した「なぎさトレイル」の実現
●海山一体で考える地域資源活用モデルの提示
この基礎調査の成果が、対象地域のみならず類似条件を持つ「なぎさ海道」の各地域にとって参考となる情報提供と新たな連携実現の一助となることを願っています。それは今後、人と自然が共生し合える持続可能な環境が日常生活圏に広がっていくために、「なぎさ海道」に関わる人々が認識し守るべき要件を示唆するものとなるに違いありません。そして、これらの調査を踏まえ、大阪湾べイエリアが「なぎさ海道」の持つ共通の価値観でつながりつつ、それぞれの地域個性を生かした新たな海辺環境の創造への“ムーブメント”が生まれることを期待するものです。
最後になりましたが、調査にあたりご協力いただいた方々に厚くお礼申し上げます。
平成12年3月
なぎさ海道基礎調査委員会
(財)大阪湾ベイエリア開発推進機構