「新春エッセー」
一方通行
ある日、岡山の町を若い女性と二人で歩いた事がありました。爾来約50年という歳月が流れましたが、今でもその道を歩くと、ふと甘い想いに捉えられます。しかし、彼女もすでに70代の主婦になっているし、私も十分に年老いた爺さんになってしまいました。
50年前に私と彼女が肩を並べて歩いたとき、そこには様々の可能性が存在していました。二人は結婚しないで済ます事も出来たでしょうし、結婚するにしても3ヵ月後に式を挙げなくて、数年延ばす事も出来たでしょう。しかしどんなに考えても、50年前に戻って彼女との関係を初めからやり直す事は出来ません。