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経済水域で外国によって正当に求められるべき最適条件に、出来る限り近づけた権利を与えるために、国連海洋法条約はそのような国に、航行の自由、上空通過の自由、及び海底ケーブルやパイプライン敷設の自由を行使する権利を与えているのである。勿論、これらの自由、例えば船舶、航空機、及び海底ケーブルとパイプランの運用に関連して、海洋の国際的な利用をも許可している。しかし外国船舶は、特に環境保護の基準を採り入れ、国連海洋法条約に基づき、沿岸国によって定められている立法権と取締り措置に従うべきである。

 

国連海洋法条約はまた、善隣的行為と言う<理想>の他面にも訴えている。つまり、沿岸国とその他の国に、互いに与えられた権利を相互に尊重することを要求し、境界画定問題の正当な解決を呼びかけているのである。

 

多分、体制・手続き・制度的調整条項が、<理想>及び、イデオロギー至上論者を取り込もうとする複雑な努力を最も反映していて、これらは、国の管轄権が及ばない海底地域とその資源に言及している国連海洋法条約第11部に記されている。その海域と資源は'人類共同の財産'であることと、その開発が'全人類のために'使用されるべきであることは合意されたが、一見相反するこの二つのイデオロギーに対する信念は、その概念をどのように実行させるべきかという点において、基本的に一致するに至らなかった。この不一致は、明らかに二つのイデオロギーにその根本を置いている。これが、いわゆる"パラレル方式(parallel system)"の採択に繋がった。幾つかの国がこの方式において、意図的な接近を受け入れられない先入観をもっていたことは、事実上、国連海洋法会議が関連条項に対する合意を導き出そうとしながら失敗するもととなった。国連海洋法条約の全体に対しても同じ結果となったのである。

 

 

 

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