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(3) 造船事情

 

英国造船業は、1955年まで世界第1位の建造国として君臨していたが、1956年に日本に第1位の地位を譲って以来、長期にわたって低迷を続け、特に1973年のオイルショック以降は衰退が著しく、1998年の商船建造量(竣工ベース)は23隻、13.4万G/Tとなり、世界建造量全体の僅か0.53%を占める程度にまで低下している。

英国政府は、1977年に造船業の再建を図るため、造船業の国有化政策を打ち出し、英国造船公社BS (British Shipbuilders Corp.)を設立し、全ての主要造船会社はBSに所属することになった。

この国有化政策と並行して、政府は新規受注獲得を図るため、造船所に船価差補助金(Intervention Fund)を供与する直接助成措置を導入し、国家助成による造船業の再建を図った。

しかし、世界的な船舶建造需要が沈滞する状況下にあっては、巨額の国家助成にもかかわらず、造船業再建の実効は挙がらず、衰退の一途を辿ることとなり、国家助成政策は結果的には完全に失敗に帰することとなった。

この結果、政府は国有企業の民営化と斜陽産業への助成打切りという基本方針を打出し、これに基づき83年にBSの民営化計画が正式に発表され、経営状況が比較的良い艦艇建造部門の民営化に着手し、85年度末までにBS傘下の全ての艦艇建造造船所が民間に売却もしくは閉鎖された。

この際に、英国3大商船建造所の1つであったGovan Shipbuilders Ltd.は、88年にノルウェーに売却され、また、North East Shipbuilders Ltd.は、適当な売却先がなく、同じく88年に閉鎖されている。

このように、現在英国造船業の商船建造部門は、存続が危ぶまれる事態となっている。

一方、修繕部門は英国本土および欧州諸国の造船所との激しい競争により低迷を続けており、内航船の修繕工事なども大陸の造船所に流れる傾向にある。

 

 

 

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