また、我が国造船業ひいては世界の造船業のレベル向上に一定の役割を果たしてきた大手造船業が、引き続きその機能を維持することができるよう、コスト競争力、営業力等を強化するための経営の統合等について検討を進める必要があると認識している。
一方、主として内航船を建造している中小造船業については、国内物流の構造変化に伴って構造的な不況に陥っており、1997年12月に海運造船合理化審議会は中小造船業対策に関する補足意見書を報告した。(図1-2参照)現在、中小造船業が早期に活力を取り戻すために、過剰設備の処理や技術基盤・生産基盤の強化等の構造改善対策に取り組んでいるところである。
(3)国際協調の推進
国際的な単一市場を分けあう世界の造船業にとって、調和ある発展を図る上で国際的な強調を推進することは不可欠な要件である。我が国は造船分野のリードカントリーとして国際協調のための各般の取組みに積極的に参画している。
(ア)世界の造船国との政策協調
1994年12月にOECD造船部会において採択された政府助成措置の削減と加害的廉売行為の防止を内容とする協定については、これが世界の造船市場における公正かつ自由な競争を促進し、造船業の健全な発展に資するものであることから、我が国としても世界最大の造船国として、本協定の早期発効、さらにはその後の適正な実施に向けて他の造船国との政策協調に努めている。
また、我が国は、造船市場を安定化させるため、OECD造船部会、アジア太平洋造船専門家会議、韓国との政策対話等の場を活用し、需給バランスに関する共通認識を醸成させるよう努めている。
(イ)地球環境問題等への対応
船舶の高齢化の進行、サブスタンダード船の増加が環境保全、航行安全に脅威を与えている状況にかんがみ、環境保全対策等に積極的に取り組むことが必要である。したがって、船舶に関する環境保全技術の開発を促進するとともにその成果の普及を図るため、造船業基盤整備事業協会では、1991年度からタンカーからの油流出防止技術及び船舶用機関の排気ガス浄化技術の研究開発を実施している。
(ウ)船舶・造船分野の経済協力・技術協力の推進
水域に接する開発途上国にとって、船舶は、人や物資の輸送手段として住民生活や社会経済の発展に重要な役割を果たしている。また、造船業の労働集約性・関連産業への波及効果に着目すれば、造船業の振興は経済発展の誘因となるものである。したがって、これら諸国においては船舶や造船業の整備に積極的に取り組んでいくことが望まれるところであり、我が国としてもこれらに対する経済協力・技術協力を今後とも推進していくこととしている。