5-1-2 学会発表等での活用
学問分野整理が主目的でなくとも、何かを総括してゼネラル・ビュウを示そうとするときに、立体目次の手法を軸にした分野グローブの提示は有効である。主題の概観だけでなく理解を援けるためのまとめの資料として判り易いからである。
ただ、注意しなければならない点が一つある。シンプルなことではあるが、グローブの分野例や事項例はとり敢えず手近かなものをはめ込んであるから、会場にいる全ての人の関心の的である研究分野等が網羅されているわけではない。聞いている方は不思議なことに、提示されたグローブの“完全性”を期待している場合が多く、足りなかったり、自分の領域が“無視されている”と、非常に大きな不満感・不信感を抱いてしまうのである。
従って、そのエクスキューズをいかに上手に“事前に”理解してもらえるかが鍵であり、それをクリヤーしさえすれば、かなり説得力のある資料となることは間違いない。三次元動画像を出せる環境などではそのような心配はふつうない。立体配置の持っビジュアルの強さであろう。
さて、このような苦い経験を経ながら、作成したいくつかのグローブを学会発表や講演に使用して効用を確かめてみた。事例を記しておく
例1. 東京大学海洋研究所共同利用シンポジウム(1998/12)「水産学の空白領域」
濱田隆士:分野整理学からみた水産科学での空白領域〔近代水産科学グローブの二次元表とグラフ〕
例2. 海洋開発論文集15集(1999/5)
赤見朋晃・和田理恵・清野聡子・濱田隆士:日本の大学における海洋教育科目の分野分布特性〔海洋教育(国内)グローブの象限(軸)のキャラクタライゼーション〕(概要は本報告4-1-lbアの項に収載)
例3. 第54回日本体力医学会大会シンポジウムI(1999/9)
濱田隆士:「変化するヒト」〔ヒトの特異性グローブの二次元素と国の提示〕
*用いられたグローブは、本プロジェクト成果物に含まれていないので、講演要旨から引用・再録しておく。(図1)
例4. 自然史学会連合日本学術会議50周年記念合同シンポジウム「博物館の21世紀─ナチュラルヒストリーの未来─」(1999/10)
濱田隆士:博物館での自然史学習─ハンズ・オン思潮を基本に〔拡張されたハンズ・オン情報取得領域グローブ、自然史科学グローブの提示による展開〕
**当発表中には、本プロジェクト成果物に含まれていないグローブ例が用いられており4-2-1に引用してある。
グローブ作成のステップのうち、CG化までの手法は二次元作業であり、表か図の形態をとるので、学会等でのデモンストレーションの他配布資料にも向いているという特性があり、広く活用できる。資料はデータ・べース化してファイルされ、後日の追加、改訂に供される。事例が増加すれば、全体として分野宇宙の素材が蓄積されることになり、分野整理学として超領域科学の理解の一助となるであろう。