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4-2 総合的科学研究の方向

 

海洋とそれをとりまく地球環境ならびにヒトと海とのかかわり、という複雑系については、21世紀での世界の大きな関心事となろう。ミレニアムレベルでのスコープが求められる以上、広視野かつ長期展望をもつためのさまざまな方策がとられるに違いない。

わが国においては、1996年以降、7月20日(国民の休日:海の日)を機に捉えて、「海」をターゲットにした日本財団主催の国際海洋シンポジウムが開催され、テーマも幅広く理系─文系にわたるものを国内外に求め、1999年までの4年間続けられた。

1998年には、ポルトガルのリスボンにおける“海の万国博”開催に合わせて、「国際渚シンポジウム─Revisitar o Mar─」が日本からの呼びかけで実現し、各国から海洋の研究について「渚─Nagisa─」をキーワードとしながら多様な局面が話し合われた。

このような海洋への学問的関心と社会的関心との交錯ないしは相互作用は、おそらく今後の世界の斯界への潮流を形成することになろう。それだけに、海洋の研究の総合科学的展開はそれに見合った全体像の把握、あるいは分野群の相互関係の理解が強く望まれる時代の到来といってよい。

地球環境問題が世界の最大の課題である今日、対策的にも地球環境科学の確立が焦眉の急であることは問違いなく、地球環境政策科学や海洋環境科学など目新しい総合分野の構築が主題となり得よう。

一方、生活文化の面から海を捉える視座からすれば、生活や人文的なニュアンスも含むより大きなコンテンツを有する「海学」(Marinology)という認識があってもよい、ということにもなる。すなわち、学問的な意味での超領域的研究の広がりにつれ、いうならば上述のような様々なグローブの成立を理解しての大型複雑系としての海洋の在り方に相応しい新しいネーミングは時宜を得ているといえよう。

このような総合的分野統合の動向は、

地質学→地球科学→地球学

の成立を思わせるし、あるいは

生物学→生物科学→生命学

への可能性をも示唆するものであり、

海洋学→海洋科学→海学

のベクトルは、博物学の原点へのノスタルジックな現象とみるよりは、学問の深化から総合化への視座の変革期における一つの必然であると捉えられてよい。

 

 

 

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