となると、海洋資源学が鉱物や生物資源に目を向けたものから、エネルギー資源をもターゲットにした分野に成長することも十分に考えられる。包含される分野の拡大という展開局面である。
c. 周辺分野
海洋科学にとって周辺分野と位置づけられる諸分野は、かなり大きい基礎分野であることが多かろう。例えば、鉱物学をとりあげてみると、ふつうは全く無縁の2分野のように思われるであろうが、NaClはれっきとした鉱物であり、サンゴ骨格や貝殻をつくるCaCO3もまたアラレ石や方解石であり、さらに大型生物の骨格の大切な部分である歯牙にはアパタイトが主成分となっているなど、案外関連は深く、周辺分野として位置づけておく意義は大きい。また、海底で生成される“自生鉱物”として、電気石、海縁石、ある種の粘土鉱物などれっきとした海成鉱物さえ存在することを考えれば、周辺分野と考えるか隣接であるか、決めかねる分野とも言えそうである。
海洋をテーマにした文芸作品は多い。その点をふまえて、「海洋文学」を海洋科学の友人と見なすか、はたまた周辺事情として周辺あるいは関連分野、と言いはることもあり得よう。
天文学を周辺分野とみなすことは容易である。潮汐作用とかセーシが海洋科学での一つの分野たる潮汐学を形成するから、むしろ自明のことといっても過言でない。自然界の大きな広がりと、相関の多様性を示して余りある周辺分野扱いといえよう。
生物形態学を考えてみよう。海洋生物という大きな研究対象にとってその形態学は不可欠かつ最重要視されるランクと見なされよう。したがって、広義の生物形態学は立派な周辺科学分野である。生物を資源と見ての調理法をとり上げると、そこには栄養学は加工化学、保存科学等々がからんできて、それらを周辺分野と位置づける分野地図は、生活科学にとって極めて大切であるといえる。逆に、生活科学例の立場からしても、海洋科学が無視できぬ周辺科学となっていることも指摘できるのである。