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海洋調査技術 第11巻 第2号 1999年9月

 

また、CTDの開始時間、XBTの開始時間、生物観測の開始時間と、野帳に複数の「観測開始時間」が記載されているための混同、観測開始時間と観測終了時間の混同もあるようである。また、プロファイル情報が一致しているのに、位置が大きく違った2つのデータが、北緯・南緯の記載(±)がないときに生じ得ることが指摘されている。

2つの若干異なったデータが同一のデータと判断されたとき、WOD98では“より良い”ものを残し、他方を消去するとしている。記載されている層の数がより多いもの、測定項目がより多いもの、観測値の精度(桁数)のより多いもの等を“より良い”ものとするとしている。また、内挿値からなるデータよりも観測層に対して与えられたデータを優先する。また、データを観測した機関から直接得たものを、他の機関を経由したものよりも優先する。そうして、“より良い”ものを残して、他方を削除するとしている。MIRCでもほぼこの流れに沿って処理するが、より詳しい品質管理が観測機関以外で後に実施されることも少なくなく、最後の点については個々の事例について検討し、その結果をメタデータベースに保存する。また、“より良い”ものを残した後、他方のデータを消去せずに、重複フラグをつけて保存する。

 

5. おわりに

 

海洋データセット作成・保管に際して発生し易い誤りとその原因について、和歌山県農林水産総合技術センターの事例(永田ほか、1999)と岩手県水産技術センターの事例について調べてきた。1つの海洋観測機関を例にとっても、観測の実施体制・状況は、時とともに変化しており、それに伴って取得海洋データの形式や保存状況も変化している。岩手県水産技術センターのデータ管理システムや、ヘッダーの記載ミスを初めとするエラー発生状況は、1970年頃を境に、それ以後著しく改善されている。永田ほか(1999)は、和歌山県農林水産総合技術センターのデータの品質が同じように、1970年代の初めに良くなっていることを報告したが、三重県水産技術センターでも1970年代前半以降にデータの品質が格段に良くなったとされており(藤田、personal communication)、ほぼこの時期に全ての都道府県水産試験研究機関の観測・研究体制が一段と整備されたことがうかがえる。

一見単純に見える重複データの問題でも、本論で述べて来たように、その検出と取り扱いは決して容易ではない。この重複の問題は、IOCのIODE(International Oceanographic Data and Information Exchange)が実施しているGODAR(Global Ocean Data Archaeology and Rescue Project)プロジェクトでの未処理データの発掘に際して、また国際的なデータ交換に際して必然的に生じる。さらに詳しい検索・修正の方法を開発すると共に、関連するメタデータの整備に努めたいと考えている。

 

引用文献

永田豊、岩田静夫、鈴木亨、小熊幸子、吉村智一、竹内淳一、三宅武治:海洋データセット作成・管理に際して発生し易い誤りとその原因─I.和歌山県農林水産総合技術センターの事例から─、海洋調査技術、11(2)、p.1-10、(1999)

Ocean Climate Laboratory, NODC:World Ocean Database 1998? Documentation and Quality Control, National Oceanographic Data Center Internal Report14, 43 pp, (1998)

 

 

 

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