日本財団 図書館


そこで、SAGEの目的にも対応できるよう、新しい標準化フォーマットを開発した(三宅・中里、1999)。このフォーマットでは、全ての観測情報を観測点情報の下に並べて収録する。1つの測点情報はヘッダー部とデータレコード部とからなり、ヘッダー部には観測時間・位置等の測点情報が記述される。データレコード部では観測項目毎にブロックを設け、ブロックの数や大きさに制限をつけない。データは、観測値と観測水深とがペアの形で記載され、例えばCTDやXBTのような連続データで1 m毎の観測値が報告されれば、その形のまま収録することができる。データレコードのフォーマットは、水温・塩分等のスカラー量、海流等のベクトル量、統計結果の3種類に整理・統合した。また、ヘッダー部、データレコード部の双方に、測器コードやデータ精度(品質管理を基にしたフラッグの附加)等のメタデータを記載する欄を拡充した。化学・生物データ等に関しては、要求されるメタデータの内容が多く、全てを個々の測点にメタデータとして記載するのは無理である。別に、観測クルーズ毎あるいはプロジェクト毎にまとめたメタデータベースの構築をMIRCとJODCが協力して行いつつある。

観測(航海)計画や航海・観測報告等の情報を迅速に提供することは、SAGEはもとより、諸種の海洋観測・研究の実施上重要である。JODCでは従来から海洋調査実施機関等に記入用紙を配布・回収し、データベース化してJ-DOSS(JODC-Data Online Service System)あるいは刊行物として提供してきている。しかし、SAGEではより迅速な情報交換が望まれるので、SAGE関係研究者がJODCのWebにアクセスし、航海概要報告(CSR:Cruise Summay Report)や国内海洋調査計画(NOP:National Oceanographic Programme)を直接入力する方式を構築した。その入力画面を図2に示す。現在、ここへのアクセスはSAGE参加研究者に限っているが、この方式は一般の情報提供の迅速化に貢献するであろう。

 

4. 二酸化炭素に関する情報

気候変動に関する研究である以上、二酸化炭素の動向把握はSAGEの大きな柱である。そこでは、大気中二酸化炭素の年々変動だけではなく、大気・海洋間の二酸化炭素フラックスの実態究明を通して、収支を明らかにすることが重要である(「二酸化炭素の挙動」分科会が担当)。気象庁、海上保安庁、水産庁等の機関が、海洋中の二酸化炭素分圧の観測を実施しているが、その観測データは気象庁のデータサーバーに集められると同時に、サーバーに併設された二酸化炭素のWeb(http://sage-co2.kishou.go.jp:SAGEのWebから「二酸化炭素の挙動」分科会のぺージを通してアクセスできる)を通して関連情報が提供されている。またそこから気象庁にある世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)温室効果ガス世界資料センター(WDCGG:World Data Center for Greenhouse Gases)(http://gaw.kishou.go.jp/wdcgg.html)にもリンクできる。

WMOは、大気の組成をモニターするため全球大気監視計画(GAW:Global Atmosphere Watch)を1989年より実施している。GAWで測定された世界中の温室効果ガス観測データは気象庁にあるWDCGGに集められ、印刷物・CD-ROM等の媒体により非営利目的のユーザーに配布されている。これには、定常的観測の他、航空機・船舶等の移動体による観測、研究観測等で集中的に得られた観測のデータが含まれる。またメタデータについても組織的に集められている。SAGEの二酸化炭素の観測データは、SAGEのデータポリシーに準じて観測終了後一定期間を経た後、気象庁が管理しているWDCGGに移され、一般にも公開されることになる。

化学データに関しては、観測機器・方法、分析機器・方法の詳細など、詳細なメタデータが必要とされる。しかし、詳細なメタデータ情報を全てデータ管理システムに集めることは不可能に近い。そのため、データ取得機関で詳細な情報を保有することを原則として、データの所在情報(インベントリー)を収集管理する試みがなされている。しかし、二酸化炭素資料は全球的に統括して検討する必要があり、必要最低限のメタデータベースをどのように構築するかは緊急の課題である。MIRCでは、SAGE関連の二酸化炭素のデータベースに関して、メタデータのプロトタイプを作成する試みを開始している。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION