添付資料:
“Bathymetric prediction from dense satellite altimetry and sparse shipboard bathymetry”(Smith and Sandwell, 1994, JGR, 21803-21824)について
要旨
南洋(南緯30度以南)は入工衛星による重力データが密(地上投影した軌道間隔で2〜4km)に分布しており、船舶による音響深度測定は少ない(領域によっては航跡間隔が数百km)。flexualアイソスタシー補償理論から、堆積層が薄く海底の起伏が緩やかな場合には、水深と下方接続した重力データは波長15〜160kmの帯域で線形関係になるであろうことが示唆される。より短い波長では海底から海面への上方接続のために重力場は海底地形に対して感度が鈍くなる。また、より長い波長ではアイソスタシー補償が成立して海底地形による重力異常はほとんど打ち消されてしまう。
本研究ではこの理論にWiener最適化理論と重力S/N比の経験的な証拠とを関連させてローパス及びバンドパスフィルターを設計し、重力から水深を予測するために用いている。予測結果はローパスフィルター処理をした音響測深からの長波長(>160km)と、下方接続とバンドパスフィルター処理(15〜160km)をした重力データにスケーリングファクターSを掛けて得る中間波長の解とを結合している。Sは15〜160kmの波長帯で重力データと既存の音響測深とのrobust regressionによる相関関係から経験的に決定される。また、Sは長波長では変動する。
本研究では、堆積層が200m未満の領域では重力と水深は99%の水準で顕著な相関を示すこと、これらの領域ではSが海底物質の密度に関連しているらしいことが示唆される。予測結果は水平方向解像度5〜10km、格子点の50%で実際の音響測深の100m以内、80%で240m以内におさまる。地形の凹凸の著しい領域では予測結果は海底地形の最大振幅を過小評価する。予測結果の図は、既存のどんな水深図でも見られない多くの構造的特徴を明らかにしている。
予測結果は波長160km未満で重力場に依存しているため、音響測深線の位置決定の誤差に影響を受けにくいが、音響測深データを完全に再現することもできない。従って、構造的特徴の位置決定には使えるが、航海の危険を評価するためには使うべきではない。予測結果は米国地球物理データセンターからデジタルと印刷物の両方の形式で入手可能である。
序論
・Dixson et al.(1983): Seasatの高度計データから海底地形を推定した。
・Geosat GM : Seasatより重力データの空間分布が高密度。1991年に南緯30度以南についてデータが公開された。(全面公開は1995年。)
・本研究では水深と重力の相関を領域毎に変えることで堆積層の影響を評価した。
・本研究では構造的な細部について概ね位置精度5〜10km程度、深さ精度100〜250m程度で明らかにした。