研修を終えて─今後どんな看護を提供したいか─
多くの学びの中から見えてきたもの
JR札幌鉄道病院
桜井 環
はじめに
私は6週間の研修を通して、本当に様々な気づきがあり、また、考えさせられること、感じることが多くあり、貴重な経験をすることができたと思う。どの講義の内容でも、最終的には患者のQOL向上につながっており、緩和ケアは決して特別なものではないと学んだ。しかし、終末期患者を目の前にした時のケアは十分ではなく、さらに自身の考えを深める必要性を感じた。中でも特に心に残り、これからの自分の看護に生かしていきたい内容─1]チームアプローチ、2]家族ケア、3]患者の病状認識への関わり、4]スピリチュアルケア、について報告する。
チームアプローチ
私は今までチームアプローチがどういうものなのか、はっきりしたものが自分の中になかったように思う。そのため、他の医療スタッフの役割を把握したり、どのように連携、活用するのか理解できていなかった。ロールプレイで、自分が患者や家族、看護婦や医師を体験し、初めて自分の思考パターンや他の立場の人の気持ちに気づく点があり、今まで見えなかったものを多少理解できたように思う。そして、看護婦の専門性を重視するだけではなく、他の立場の人たちの気持ちに近づき、理解することがチームアプローチの基本のように感じた。
また大きな気づきとして、私は疑問や問題に感じていることを他のスタッフに的確に伝えられていなかったということである。自分の中で“何のために伝えるのか”、“自分は問題についてどうしていきたいのか”を明確にせず問題提起していたように思う。今までの私の問題提起は、解決ではなく雑談にすぎないということに気づくことができた。推測ではなく事実を正しくとらえ、その上で自分はどう考え、どうしていきたいのかを人に伝えていけることは、チームアプローチを行う上でとても大切なことだと感じた。
家族ケア
ターミナル期での家族ケアは重要であるが、今までの私は、患者中心と考えるあまり、家族に対して負担を与えていたかもしれないと思っている。私は研修を通して、家族ケアの重みに気づかされた思いでいる。家族は患者と同じ痛みを持った存在であり、同じように悲嘆過程をたどること、そして患者が亡くなったあとでも、家族はその辛さをもって生きていかなければいけないことへの配慮を忘れてはいけない。井上先生は、講義の中でも“そのような家族に対してどうアプローチするかではなく、その人をどうとらえるかである”といっている。私たちは、往々にして終末期患者の家族に接し、どうアプローチしたらよいか考えがちであるが、その前に、家族はどういう人なのか、患者と共にどのように生きてきたのか、今何を思っているのか、その人をよく知ることが大切である。
また、遺族ケアの重要性も再認識した。私が今まで出会った遺族の方々のほとんどは、「病院には辛くて行けない」といわれるが、これはとても大きな問題のように思う。残された家族は、どんなに満足できるような看取りをされても、何度も過去を振り返り、後悔してしまうものであるということを知った。