緩和ケアナースへの第一歩
北九州市立医療センター
市成 今日子
4週間の机上学習を終え、2週間の施設実習を迎えた。私は「神戸アドベンチスト病院」で実習させていただいた。実習の目的を次のようにあげた。
1. ホスピス病棟の理念を学び、自分の看護観を見つめ直す。
2. ホスピス病棟に入院されている患者さんや家族との関わりを通じて、死生観について考える。
3. 施設や看護体制について、また病棟運営について情報を得る。
実習における学びをこの3つの点から振り返りたいと思う。
1について
ホスピス病棟の看護理念の概要は以下のとおりであった。
(1) 肉体的苦痛だけでなく、精神的な苦痛・孤独・不安なども軽減し、患者や家族と共に最期まで人間らしく、尊厳をもって有意義に生き抜くことができるよう援助する。
(2) 医師、看護婦(士)、ソーシャルワーカー、チャプレン、ボランティアなどがチームを組み援助する。
(3)ホスピスは“生を支える場所”であり、残された人生を精一杯生きることを援助し、ふさわしい環境を整えていく。
この理念に沿って学びを述べる。
(1)について
症状コントロールにおいては、とても積極的なアプローチが行われていた。医師はもちろん、看護婦も症状コントロールに必要な知識・技術をもち、ケアが行われていた。緩和ケアにおいて、身体的苦痛を取り除くことは第一目標であり、各スタッフがその目標をしっかりと認識していることが重要だと考える。また、十分なコミュニケーションがなければ症状コントロールは難しいが、十分な症状コントロールがなされることが、信頼関係につながることも実感した。
精神的苦痛・孤独・不安への援助においては、各スタッフがしっかりと患者さんと向き合う姿勢が大切だと感じた。腰を下ろしてゆっくり話を聞くこと、患者さんの一つ一つの訴えを受けとめることなどが、信頼関係につながるのだと感じた。また、自分の人間観・死生観をもっていることも必要だと考える。
特に、スピリチュアルペインへのケアにおいては、確かなものがなければ支えきれないだろうと思い、信仰の重みも実感した。
緩和ケアに携わるものとしての資質を備えている必要があると感じた。優しさ、いたわりの気持ち、相手の心に共感できる感受性などが大切だと考える。そして、プロとしての姿勢をもつことも忘れてはならないと考える。
家族への支援についても、実践を通しての学びは多かった。家族の不安や複雑な思いに触れることができた。病状の変化に伴う不安、ご自身の疲労、どうしてあげたらよいか分からない、そして家族を失う悲しみなど、いろいろなことが家族の中で起こっていると感じた。ある患者さんは、鎮痛剤の副作用として軽い精神症状があった。家族は、痛みで苦しませたくはないが、会話がうまく通じないのも辛いとのことだった。このように家族がさまざまな葛藤を抱えていることがよく分かり、家族も含めたケアの重要性を実感した。