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施設実習を通して学んだこと

 

淀川キリスト教病院

高山 圭子

 

はじめに

 

今回ピースハウスで実習させていただくにあたって、以下の目標を立てた。

1] 他施設の看護婦が、緩和ケアという立場から患者の問題をどのようにとらえ、分析しているのか、そしてその一つ一つに対して実際どのようなアプローチをしているかを学ぶ。

2] 患者の情報をチーム内で共有し、問題を共通認識していくために、看護記録やカンファレンスをどのように活用しているかを学ぶ。

3] チームアプローチについて、独立型ホスピスというピースハウスの特徴を理解し、その中での看護の役割について学ぶ。

これらの目標一つ一つに対して、研修での学びを統合させ、自分自身や自施設を振り返り、課題を導き出したいと考えた。

 

実習にあたって

 

ピースハウスの理念を十分理解し、すべてのケアにおける基本として認識しなければいけないと思った。それは、「ピースハウスは安らぎの家である。ここで時を共にする人は皆、それぞれの生き方を尊重する」というものであり、その中に全人的ホスピスケア、家族への支援、そのためのチームアプローチが含まれていた。

まず、看護婦の具体的な関わりについて実際の場面から感じたこと、学んだことを述べる。

症状マネジメントに関連することとして、薬の管理が徹底されていた。オピオイドに限らず、必ず確認、与薬介助を行い、患者の反応を観察されていた。それは薬が飲めないという事実一つをとっても、症状や機能的な要因によるものか、飲みたくない理由があるのか、必要性を理解していないか等考えられ、それによりアプローチの方法も異なってくるのである。また、薬に関してはメディケーションシーツを用い、レスキューで使用した量も含め、トータル量が非常にわかりやすい方法で記録されていた。それは薬の効果を経時的にアセスメントしていく上で効果的であると感じた。

スピリチュアルな側面への関わりとして、印象に残ることがあった。30代の若い母親が、自分の死が近いこと、死の意味を子供達に伝えたいと思っておられることに対し、プライマリーナースとチャプレンが中心となり、患者と話し合いながら物語を作成したり、何年か先までの子供にあてた誕生日カードを作られていたことであった。これらの関わりは、子供に伝えるということを通して、患者自身が死と向き合い受容していくプロセスにおいても大きな意味を持つと感じた。

看護婦の関わりの中で中心となるのは、日常生活の援助である。患者の症状や機能障害を評価しながら、一人ひとりの思いを尊重した方法がとられていた。ティーラウンジでは、患者同士、また家族を交えてオープンなコミュニケーションがとられていた。症状により限界もあるが、できる限り生活の場を広げ、人との交わりを持つことは基本的なニーズであり、心理的にプラスの作用が大きいと感じた。

患者の情報を共有するために、カンファレンスは毎日行われていた。しかし、問題について、チームでディスカッションする場面が少なかったように感じた。患者の問題は何かを見極め、そして目標をどこに置き、どのようなケアを継続させていくかをチームメンバーが共通認識していくことは、自施設においても課題である。

 

 

 

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