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家族への援助

 

限られた時間を精一杯生きている患者にとって、家族の支えは欠かせないものである。患者と家族は常に影響し合い、切り離して考えることはできない。患者の苦しみ、不安をはじめとするストレスは、家族も同様にあるときは倍増して感じている。また家族のストレスは患者へと伝わり、苦痛症状の悪化を招くこともある。そのため患者と家族を一つとして捉え共に援助していかなければならない。

看護学における家族とは、たとえ他人であってもお互いが家族であると認識していればそれで一員とみなされる。近親者であるか否かは問われない。これまで私達は、血のつながりを重視し、かかわりを全く持つことのなかった、患者にとっては他人といってもよい家族へ、患者の援助を任せようとしていた。その援助は常に断られ、なぜ?どうして?家族なのに、と憤りさえ感じていた。家族とは患者のこれまでの生き方や思いを重視し、患者にとっての家族とはを考えていかなければならないと感じた。

家族への援助は、患者が入院した時あるいは診察を受けた時から始まり、患者が亡くなってからもその援助は続く。家族は、患者が症状を訴えた時から患者と共に不安や痛みを感じているかもしれない。そのことを考えながら、患者だけでなく家族を積極的に理解し、支えていくことが必要である。近い将来、かけがえのない存在である患者を失ってしまう家族の悲しみに対しても、援助していかなければならない。私達の行っていた家族とのかかわりを考えると、患者の情報を得るためや、退院後のサポートができるようになるなどの部分がほとんどであり、家族を支えるためではなかったように思う。また、家族の悲嘆へのかかわりや、死別後の援助についてはほとんど行われていない現状であり、今後の課題である。

講義において、患者と家族の歴史は変えられず、これまでの家族のあり方を重視した対応が必要であること、問題解決の当事者はあくまでも患者と家族でなければならず、看護婦は家族と協働していき、大切なのは結果でなくそのプロセスだと学んだ。家族のあり方はさまざまであり、看護婦は家族のありのままを受け入れる姿勢をもち、患者と家族がより良い方向へ進めるよう援助していかなければならない。

 

チームアプローチ

 

緩和ケアにおけるチームアプローチの意義は、互いに異なった役割を持つもの同士が集まり、知識や技術・情報を補うことで一人では行えないことを可能にすることである。お互いがそれぞれの役割を認識し、共に行っていくことでその力は大きくなる。実習において、患者や家族に多くの専門職員がかかわっていることを知った。コーディネーター、チャプレン、看護助手、栄養士などがそれぞれの役割をもち、患者と家族のためにより良い環境と援助が提供されていた。医師と看護婦のコミュニケーションも密であり、情報と目標の共有が重要であることを実感した。

看護婦だけでは患者や家族の援助は行えない。いかに周囲の専門職をチームにとり入れ、その調整役が行えるかも看護婦に期待されている役割の一つといえる。患者の24時間を援助し、日常生活に大きくかかわっているものとして患者のニーズに応えられるよう、働きかけていかなければならないと感じた。

カンファレンスは、情報の共有や共通の目標を設定していくうえで欠かせない。チーム内で意志統一を図り、メンバー全員が患者や家族の援助内容を納得した上で行っていけるようにしなければならない。援助内容の統一は患者への安心感と、医療者への信頼感につながる。また、患者の対応に苦慮した時やストレスを感じている時、チームの存在は大きな支えとなる。お互いがコミュニケーションを密にし、意志がはっきりあらわせるようなチームづくりが今後望まれる。

 

 

 

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