患者と心が通うケアを
聖マリアンナ医科大学病院
三谷 美星
はじめに
一般病棟で末期の患者を看取る場合、告知がされていないから、告知はされていても十分な病状説明がされていないという理由から患者と面と向って話し合うのを避けてしまったり、痛みや症状のコントロールに対する知識・技術不足から、また医師の告知や治療に対する方針の違いなどから苦痛や苦悩を抱いている患者を目の前にして自らの無力さを感じてしまうことが多々ある。このような状況下で亡くなられた患者に対し虚しさのみが残り、徐々にポジティブ・シンキングができなくなっていた。緩和ケアナース養成研修に参加することにより少しでも苦痛や苦悩から解放する手掛かりが見つかればという思いで参加した。実際、講義や実習を通して、またグループワークを通して多くの学びや気づきがあり、一般病棟でもできる緩和ケアについて考えていきたい。
<研修期間>
平成11年6月14日(月)〜7月26日(月)
<研修目的>
ホスピス、緩和ケア病棟における終末期患者と家族のための緩和ケアの質の向上を図るために緩和ケアの基礎を学び、緩和ケア病棟における看護を実践できる能力を育成する。
<研修目標>
1. 緩和ケアの基本的理念を理解する。
1) 緩和医療
2) 緩和ケア
3) 生命・看護倫理
2. 緩和ケアに必要な知識・技術を習得する。(患者のもつ症状の緩和技術を習得し実践できる。)
1) 症状コントロール
2) ターミナル期のリハビリテーション
3) ターミナル期のスキンケア
4) コミュニケーションスキル
3. 患者や家族の心理を理解し、こころのケアに対する知識・技術を習得する。
1) 進行がん患者の心理的特徴と援助
2) がん患者の家族への援助
研修内容
1-1) 緩和医療とは、治癒を目的とした治療が無効となった進行がん、AIDSなどの難治疾患の患者に対して行われる積極的な全人的治療であり、このような難治疾患に苦しむ患者と家族ができる限り良好なQOLを実現できるように援助することである。
緩和医療の概念:
1] 生きることを尊重し、誰にも例外なく訪れることとして、死に行く過程にも敬意を払う。
2] 死を早めることにも、死を遅らせることにも手を貸さない。
3] 痛みのコントロールと同時に、痛み以外の苦しい諸症状のコントロールを行う。
4] 心理面のケアや霊的(spiritual)な面のケアを行う。
5] 死が訪れるまで、患者が積極的に生きていけるよう支援する体制をとる。
6] 患者が病気に苦しんでいる間も、患者と死別した後も、家族の苦難への対処を支援する体制をとる。