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そして、患者の癒しを看護の本質として言い続けるならば、看護婦はもっと自分自身が癒しの道具になることを意識して、患者に対して「私たちは何をする人なのか、何がしたいのか」を伝えていかなければならない、と話されていました。いままで、コミュニケーションについて、癒しの関係とまで考えたことがありませんでした。ただ、私との関わりの中で「少しでも苦痛や苦悩が軽減するのなら」とは思っていましたが、もっと積極的に患者を癒せるような関わりを意図的に作っていくことが大切なのだということが分かりました。

また、治療的コミュニケーションの技術として、積極的な傾聴があります。「患者さんの話を傾聴する」と看護計画の中で簡単に使用してきましたが、具体的に傾聴する態度を学ぶと、今までの傾聴は名ばかりで、ただ話を聞いて意見を述べていただけだったことに気付き反省しました。

患者を理解することに関しても看護婦本意に考えることが多かったように思います。患者の価値観や生活環境、家族環境などを看護婦の尺度で考え、これはおかしいとか、あの患者は変わっているなどと判断していたように思います。看護婦はそういう個々の患者の違いをきちんと理解し、ありのままを受け止めていく必要があると感じました。

実習に行った坪井病院では、看護婦は価値観を持たないで、患者の価値観を看護婦の価値観と考えて患者に接すると話されており、それを実践していました。そのためか、患者と看護婦の関係はとても良く、患者は気軽に詰め所に訪れ、一緒にお茶を飲んだり、夜間眠れない時にも詰め所に来て話をしていけるような環境に関係がありました。私は、まだそういう関係を経験したことがありません。緩和ケア病棟に勤務している時にこのような関係作りができるようになりたいと思います。コミュニケーションはとても重要な看護技術だと思います。これからも学んだことを踏まえてコミュニケーションについての学びを深めたいと思うとともに、患者を癒せるような関わりを持ちたいと思いました。

 

2) チームアプローチについて

緩和ケア病棟で働くようになってから、特にチーム医療という言葉を耳にすることが多くなりました。チーム医療は、緩和ケアにとっても一般病棟にとっても大切であると考えています。しかし、研修に来ていた方の病棟では、ほとんどの所でチームのコミュニケーションがうまくいっていないと答えていました。また、チームがうまくいっていない理由は、医師の理解不足という答えも多くありました。チームの構成は、医師と看護婦のみであり、十分なチーム構成ではないという答えもありました。

一般的に緩和ケア病棟でチームメンバーというと、医師、看護婦(看護助手)、MSW、栄養士、薬剤師、ボランティア、そしてもちろん患者、家族だと言われていますが、ボランティアの入っていない病院も多くあります。私の病院では薬剤師と臨床心理士のような精神科領域の方はいません。ボランティアも最近になってから週に1回来てもらっている状況であります。実習に行った坪井病院も薬剤、栄養、精神科などは入っていませんでした。

チームのメンバーは多い方が、患者を多角的にとらえることができ、有効だと思いますが、常時、そのメンバーがいなくとも問題が生じた時に、いつでも協力し合えるようなメンバー作りが大切なように思っています。現に坪井病院では、少ないチームメンバーでありながらも、チームアプローチに問題があるようには思えませんでした。講義の中で先生が話されていたことは、「メンバーの人数や職種が少ないからといって、患者をトータル的に見れないと考えるのはおかしい、必要になった時に参加するような形のメンバーでも、十分にチームアプローチはできる。それには、各専門職は何をする人なのかをきちんと理解し、各専門職が期待される役割をきちんと果たせば、トータル的に患者をとらえ、問題解決することができる」と話されていました。そして、お互いに各専門職の役割を認識し合わなければならないとも話されていました。私の病棟でも、「もっと自主的に患者と関わってくれたら良いのに」と看護婦が他職種に思うこともありますが、依頼の経路などを考えた時にそれは難しいと分かり、各職種と患者の仲介は病棟看護婦の役割であると認識を新たにした経験がありますので、各職種の役割の認識などはきちんと認識し合っておかなければならないと思います。

 

 

 

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