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○ 進行がん患者のためのチームアプローチ

チームアプローチの必要性

互いに違うもの同士を引き合わせ、それぞれが互いの知識や技術を補完することで、一人ずつではできないことを可能にする。

それぞれが確立した「個」が互いに違いを認識し合いながらも、相互依存関係で自発的に結びつき、ある種の緊張を伴う関係の中で意味と価値を作り出す。

チームアプローチの中の役割期待

看護婦の役割をアピールしていく。何を期待されているのか。何ができれば責任を果たすことができるのか。責任とは、知識・技術をもってアセスメントし、スキルをもって患者に提供していく。

・カンファレンスでは、意見を出し合い終了してから盛り上がるようなことはしない。そこで決まったことは“引き受ける覚悟”をもたなければならない。

・カンファレンスでは、いかにみんなの意見が出せるか、メンバーシップの活用をする。

・チームは1+1が3になりうるからチームを組む。

・チームメンバーは、成功するときも失敗するときも一緒である。

・チームのメンバーとして充実している、楽しい、達成感があることが大事。

・価値観の違う者同士の集まりなので葛藤、不一致が起こるのはあたりまえである。起こったときにどうするかが問題である。

 

チームを組み、共に話し合い、情報を提供し合えば、患者の本当の姿が浮き彫りにされる。このチームを組むということはどういうことなのだろうか。なぜチームを組まなければならないのだろうか。

“価値観の違った者同士がひとつの目標にむかってつくりだす過程”、これがチームアプローチのおもしろさだと考える。価値観の違う者がそれぞれの立場、観点から、あるひとつの目標に対しアプローチをする。目標は同じであるが、いろんな角度から患者をとらえることができる。

実習では様々な職種の人達に出会えた。チャプレン(病院牧師)、ケースワーカー、ボランティア、ボランティアコーディネーター、訪問看護婦などである。それぞれがそれぞれの観点から患者をみ、カンファレンスを行っていた。私達看護婦にはみせない顔を患者は他の職種の人にはみせていたり、他の職種の人から浮き彫りにされる新たな問題があった。

末期患者は多くのニーズをもっている。その多くのニーズは、それぞれのニーズを満たすことのできる専門家の協力によって応えることができる。そのニーズを満たすことが死に行く人達へのチームアプローチの基本であることを学ぶことができた。

 

研修を終えて─人間そのものをみつめるということ─

 

この場では以上3課題について振り返ってみた。しかし当然のことながら、このほかにも新たに考えさせられたこと、学んだことが多くあった。そしてそれらに共通することは、《人間そのものをみつめること》である。症状マネジメントしかり、家族ケアしかりである。医療者がどれだけ患者を尊重し、その人間そのものをみつめることができ、とことんつきあうことができるか。このことが緩和ケアの《鍵》になることであると考える。

私には以前よりひとつの解決できない疑問があった。それは、終末期における希望のありかたである。人間そのものをみつめたとき、死んで行く患者の希望とはなにか、死んで行く患者にとって希望を持たせるとはどういうことなのか。たとえどのような人間であっても、たとえ死を受容した人であっても死ぬことは本望ではないはず。その死に向かっている、死を避けることができない患者に対し、どのようにどういう希望を持たせたらよいのか。

 

 

 

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