病院全体が緩和医療を提供できる場に
福井赤十字病院
中川 直美
はじめに
緩和ケアナース養成研修で、多くの講師より緩和ケアについての知識を学んだ。それらの学びと実際を結びつける目的で、ホスピス(緩和ケア病棟)における実習を行った。私自身、ホスピスにおける実際のケアを目にするのは初めてであり、すべてが新鮮であった。そして、看護ケアのみならず、いろいろな面で多くの学びを得ることができた。
自己の実習目標をもとに、実習を通して学び得たこと、今後の課題として明らかになったことを以下にまとめる。
実習目的・目標
目的:研修での学びを統合し、実習施設での看護の実際を通して、緩和ケアに対する知識・技術を深めることができる。また、実習を通し一般病棟における緩和ケアのあり方を考え、課題を明らかにすることができる。
目標:
1 緩和ケアの実際を知る。
2 講義での学びと実際を具体的に結び付けて考えることができる。
3 緩和ケアにおける看護の専門性について考えを深めることができる。
4 一般病棟における緩和ケアのあり方を考え、課題を明らかにすることができる。
緩和ケアの実際
衣笠病院は歴史が長く、老人が多いという地域の特色から老健施設をはじめ、在宅医療に力を注いでいる。その中で、衣笠ホスピスは開設後一年の新しい施設であり、特色は1]病院併設であること、2]キリスト教精神に基づくこと、3]在宅での緩和ケア推進の拠点となる、である。
ホスピスを開設するにあたり、地域住民の理解を得るための公開シンポジウム等の広報活動、ボランティアの募集・教育、また、看護婦の教育も計画的に行われている。ソフト面での充実に力を入れており、これはとても重要なことであると同時に、大変難しいことであると学んだ。ホスピス開設後、一般病棟の看護婦、職員の態度も優しくなった、との声を聞き、ホスピスケアを病院全体で提供できるようにするという姿勢を浸透させるためにも、ホスピスは重要な位置にあることを理解できた。
WHOでは、がんの慢性期から終末期を含めた病期にある患者を緩和ケアの対象としている。衣笠ホスピスにおける対象も同様であるが、入院患者は死を迎えるまでホスピスで生活する人がほとんどである。緩和ケアは末期だけでなく、もっと早い病期の患者に対してもがん病変の治療と同時に適用すべきと考えたとき、ホスピス(緩和ケア病棟)の医師や看護婦だけが緩和ケアの知識、技術を持っていたとしても、その外来や病棟に関係しなければ患者はケアを受けられないとしたら、患者にとっては大変不幸なことである。初めは緩和ケアスタッフとはホスピス(緩和ケア病棟)に携わる者と捉えていたが、ある人が病名を診断されたときから、その人及び家族を取り巻く者(特に医療者)がスタッフとなるのである。病院全体が緩和医療を提供できる場であることが望まれる。