自分の死生観を持つことの大切さ
福島県立医科大学医学部附属病院
保坂 ルミ
はじめに
今回、緩和ケアナース養成研修4週目に2週間の施設実習があり、緊張と不安とともに期待を持って参加させていただきました。私は臨床経験とし11年目に入るのですが、ターミナルステージにある患者さんの臨床場面において数多くの困難さを感じることがありました。例えば、症状マネジメントの問題であり、チームアプローチとしての機能が十分に果たせないでいることであったり、患者さんやその家族への精神的・スピリチュアルな問題への援助であったりということです。
緩和ケア研修における講義での学びを具体的に結びつけ、チームにおける看護の役割を理解し、考えを深めていくため以下のことを個人実習目標としました。
1. がん患者とHIV患者を通して緩和ケアのあり方を学ぶこと。
2. (痛みを主とした)症状マネジメントの実際はどうなされているのかということ。
3. チームアプローチの実際。他部門との連携はどのようになされているのか。
4. 緩和ケア病棟のナースとしての教育について。
5. ボランティアについて。その位置づけと活動や問題点について。
6. 遺族ケアについて。その方法や評価はどのようになされているのか。
7. 音楽療法等の実際について。
病院実習
実習病院は、国立療養所東京病院13病棟(緩和ケア病棟)でした。森の中にある静かな病院という印象が強く、小鳥のさえずりが聞かれる環境の素晴らしい場所でした。病床数は20床で院内独立型、がんの患者さんの他にHIVの患者さんもいらっしゃいました。病棟創設後5年目に入ったところで、スタッフの方々の病棟を創り上げていくという熱意をとても感じ、婦長さんの「試行錯誤なんですよ」という言葉の中には、その苦労とともに喜びも感じられました。10日間の実習の中で何をくみ取っていけるだろうかと不安にもなりましたが、私自身が勤務先以外の施設で実習できることは、自分の病院のメリット・デメリットを考えることができ、研修後の私の役割や病院への働きかけを知ることにもつながりますし、実際的な部分で緩和ケアの看護の専門性についてスタッフの方々の話が聞けることは励みにもなると思いました。
初日は、病棟内を案内していただきましたが、個室と大部屋があり、病院でありながらも患者さんの「生活の場」として大事にされていることがわかりました。部屋にはお家からの家具や布団、患者さんが大事にしているものが身の回りにおかれ、ベットの出入りも可能でした。普通の病院といえば、生活上に制限が強いられ、起床は何時で消灯は何時とか、持ち込みができないものとかがあり、また患者さんが皆同じ病衣を着て、最後まで「患者さん」として生活することが多いものです。しかし、緩和ケア病棟では、「生活する一個人」としてとらえ、環境面からも「個人」を尊重していることは重要なことだと思いました。
緩和ケア病棟では、看護体制としてプライマリーナーシングをとっていました。看護婦が責任を持って患者さんをケアし、プライマリーであるという自覚を強く持っていました。