IV章 まとめ
最後に、以上みてきた、明石海峡大橋の概況(I章)、アンケート調査にみる各交通機関の利用実態(II章)、明石海峡大橋開通による各方面への影響(III章)をまとめるとともに、本調査において実施した利用者へのアンケート、事業者へのヒアリングによる利用者サイドの情報を参考にしながら、明石海峡大橋に係る旅客・観光関連の今後の施策展開のあり方と課題について整理することにする。
1. 明石海峡大橋開通による影響のまとめ
明石海峡大橋の開通による影響を、(1)交通体系の変化の状況、(2)交通・生活分野の影響と今後の見通し、(3)観光分野の影響と今後の見通し、の3つの点からまとめを行う。
(1) 明石海峡大橋開通による交通体系の変化の状況
I章のデータによりながら、交通体系の変化の状況を整理する。
1] 京阪神―淡路島・四国間の交流が拡大
従来、移動交通手段の中心であった旅客船・フェリーについては、明石海峡大橋の開通により、大幅な輸送人員減となった。一方、明石海峡大橋を経由する京阪神―淡路島・四国間の高速バスについては、輸送実績は好調であり、航路の減少分を大きく上回る利用客数であり、全体としてみれば、京阪神―淡路島・四国間の交流は拡大した。
具体的には、明石海峡大橋開通前の平成9年度では、明石海峡の断面交通量は約1万台/日(全てフェリー利用)であった。明石海峡大橋開通後の平成10年度では、フェリーによる横断は約2千台/日と大きく減少したが、大橋利用による横断は約27,000台/日となった。
2] 旅客船・フェリー利用の減少
道路による自動車交通が増加する一方で、本州と淡路島、四国を結ぶ旅客船・フェリー(阪神―淡路島・四国間)の利用は大きく減少した。特に、淡路―阪神間、徳島―阪神間、香川―阪神間の航路において利用の減少が大きかった。
また、明石海峡大橋の開通と同時に廃止になった航路があり、平成11年度に入ってからもいくつかの航路が廃止になっている。
3] 飛行機利用の減少
大阪と四国間の飛行機利用も減少し、航空旅客数(大阪―徳島・高松間)は、明石海峡大橋の開通前と比べて4〜6割の水準にまで減少した。
4] 高速バスの路線開通と利用拡大
明石海峡大橋の開通とともに高速バスの路線(京阪神―淡路島・徳島間)が開設されることとなり、高速バスの利用は好調である。大阪―徳島間等の路線においては、平成11年度における利用が平成10年度における利用を上回る実績を示している。
5] 関連インフラ整備の進展
明石海峡大橋開通に合わせて、周辺の自治体や国、公団等により、神戸淡路自動車道等に関連する道路等インフラの整備が進められている。