平成11(1999)年度 公海の自由航行に関する啓蒙普及事業 論文シリーズ
特別寄稿論文
第8章 海洋と漁業資源2
唯是康彦(千葉経済大学教授)
1. 世界の食糧問題
2. 20世紀農業
3. 21世紀農業の可能性
4. 農業と生態系
5. 水産業と資源問題
6. 市場原理と安全保障
7. 食糧流通の世界管理
8. 水産業の展開
9. 養殖の限界
10. 栽培漁業の限界
11. ハイテクの応用
12. 食生活への反省
1. 世界の食糧問題
水産資源に関わる問題は、すべてそれを生産基盤とする水産物の需給状態との関連で検討されるべき課題であるが、水産物の大部分は食糧になるから、水産物の需給関係は食糧全体の需給関係のなかで位置付けられなくてはならない。そこで、まず世界の食糧需給を考察することからはじめる。
FAO (Food and Agriculture Organization)『2010年の世界農業』によると、世界の食糧需給はほぼバランスする、と考えられている。93の開発途上国で飢餓人口は1990年頃には7億8,100万人だったのが、2010年には6億3,700万人に減るという。また、アメリカ農務省の『2005年の国際農業見通し』でも穀物・油脂・畜産物の需給は結局バランスすることになる、という。
もちろん、飢餓人口がなくならない以上、この展望に問題がないわけではない。そのうえ、2050年には人口が国連見通しの中位数で約7割弱増加して、60億人の現在人口が98億人になるとみられている。そればかりでなく、生活水準が上がって動物性食糧の需要が高まると、その数倍の飼料需要が発生する。
2 平成11年度「公海の自由航行に関する普及啓蒙プロジェクト」のための書き下ろし原稿。12月10日に行われた研究委員会での講演をベースとした論文。(事務局)