地域の人と来訪者の間の視点やセンスが一致しなければ、観光地の持続は困難なのではないだろうか。都市部の商業地では、市場を通じてセンスの交流が可能だが、住宅地や過疎地、田園などでは市場もまた公的関与もそれだけではプラスに機能しない。まちづくりやまちおこし・むらおこしでは、キーマンがおり、専門家を巻き込んで地域の人と地域の価値の再認識やスタイルの模索に時間をかけている。時間がかかって遠回りのようだが、結局それが近道なのではないだろうか。まちづくりやまちおこしを例にあげるなら、別に観光地になろう・しようとおもってしているのではなく、ある日気が付いてみたら「観光地になっていた」という実状である。“ポスト・リゾート開発型”の観光プログラムは、「観光地をつくる」のではなく、「結果として観光地になる」よう専門家と地域の人が共同して取り組むものではないか。
これからの世代は、現在の荒廃した国土を原風景として育ってゆく。高度成長の前を知る世代がまだ現役で、これまでの方法の行き詰まりが明らかになった「今」が、方向転換の最後のチャンスではないか。
この論文では、第1部として、“ポストリゾート開発”時代の「観光」の視点について整理した。そして、第2部で、大阪近郊の浜寺公園をとりあげ、都市近郊でも成り立つかもしれない「観光地」(ちょっといってみたくなる場所)を提案した。