要約
近年、都市観光に関する研究が観光学において重要なテーマの1つとなってきている。日本における観光学研究の状況をみてみると、日本の場合は、政策的な面から観光に貿易収支改善のための内需拡大や全総計画では過疎問題の解決の受け皿としての役割を求めてきたが、最近研究対象において、リゾート法の一般観光地を重点にしつつも、既存の都市施設や都市近郊の観光資源を総合的に活用できるという点から都市観光に対する関心が高まってきた。
韓国はバブル崩壊以前から観光施設が作られた都市を中心に、外貨獲得を1つの目的とした観光開発を強力に推進してきた。それと、従来は自然資源や歴史的な文化遺産といった、既存の観光対象を重点的に分析したが、都市観光の興隆に伴って段々観光活動分析に移行するようになった。しかもその中の理論や実証の中で経済的側面が非常に深められてきたため、今後都市観光の一般化に向けての研究や方法論が求められる。
本研究は、最近成長産業として再び、観光産業が認識されている都市における観光の構造や機能を分析し、それを通じて都市観光が地域経済に及ぼす影響、ひいては観光開発の面において都市政策の課題を明らかにすることを目的とする。本研究では都市観光の概念規定として、「都市観光(urban tourism; city tourism)」は、都市観光の主体である都市観光客と、その客体であるショッピング、建造物、コンベンション等との間に発生する非居住者による余暇活動の総体であると定義した。
実証分析は、広域中心の中枢都市である韓国の釜山市を取り上げ、都市観光が地域経済に及ぼす影響を分析した。分析の方法はI-O分析(産業連関分析)を用いて行い、釜山市における市外入域観光客や日帰り観光客、外国人観光客の3つのパターンによる観光消費が地域経済にどのような影響を及ぼしたのかを分析した。その際、家計消費転換率を代入し、所得の増加による家計消費の増加が波及効果に反映されるようにした。
分析結果としては、まず観光開発による観光産業の成長が他産業の成長に波及し、その反対の状況も展開されうる地域経済内の産業間依存関係が説明できた。
第2に、生産誘発効果については、釜山市の、生産誘発効果は当初の観光消費額の1.3倍に相当するし、波及効果の高い順はサービス業(47.2%)、運輸(14.8%)、製造業(9%)であった。
第3に、雇用誘発効果は、新規で誘発される雇用者数は全市就業者数の約3%を占め、同市における既存の金融・保険の割合に匹敵することが分かった。
観光開発の面において今後の政策課題としては、例えば自給率をみると最も低いのが鉱業と農林水産業であった。つまり、今後この分野での自給率を高める必要がある。その事は、観光産業の活動に必要な食品の原材料や商品の購入のため、市域外に資本を流出させるのではなく、域内でとどめる事をいう。そのためには、市域内の観光産業に関わる産業分野を広範囲で開発・育成していく事である。