プロモーションとは「買手に情報を伝達して商品の存在とその効用性を認知させたり、想起させることにより商品の需要を喚起・刺激し、市場の開拓の確保を図るためのマーケティング活動である」*8。したがって、デスティネーション・マーケティングにおけるプロモーションとは、マーケットにおける航空会社、旅行会社、消費者を対象として、デスティネーションの存在を認知させ、旅行先としての選択を促す活動である。
3. 研究の方法
(1) マーケティング戦略の視点からの分析
台湾マーケットにおいて北海道のデスティネ一ション・マーケティングには、日本と台湾の数多くの様々な観光組織が携わっており、これを分析するには、これらのマーケティング活動を統合すべき観光マーケティング戦略の視点によることがふさわしい。
したがって、日本と台湾の観光組織によるデスティネーション・マーケティングの諸活動を、前述のマーケティング戦略における「5つの要素」について分析することとする。
(2) 研究対象の範囲
本研究の対象とする期間は、日本アジア航空が先陣を切って北海道への送客を開始した1995年4月から、台湾人客数が急増し「北海道旅行ブーム」の様相を呈している1999年6月までとする。
また、北海道と台湾の主要な観光組織がどのようなデスティネーション・マーケティングを実施したかに焦点を当てる。北海道の観光魅力が台湾マーケットで高い評価を得た理由等の分析も非常に重要であるが、本研究の対象からは除く。
(3) 観光組織
北海道のデスティネーション・マーケティングの諸活動に携わる観光組織は、デステイネーションに所在し北海道を商品として売る「北海道側セラー」とマーケットに所在し北海道を買う「台湾側バイヤー」に大きく分けられる。
航空会社や旅行会社は、消費者に対して北海道路線の航空座席やツアー商品を販売する「セラー」でもあるが、その前段階で世界や日本各地の数あるデスティネーションのうち北海道を選び商品化する観光組織であるので、ここでは、バイヤーとして分類する。
1] 北海道側セラー
<日本観光協会台湾事務所>
日本のNTOは特殊法人の国際観光振興会(JNTO)であるが、日本と台湾との間には外交関係がないため、1984年、社団法人日本観光協会が台北市に台湾事務所を設置し、台湾人の誘客活動を行っている。同事務所には、JNTOの職員が出向している。(1990年3月から1996年9月まで筆者が、それ以降現在まで上村仁氏が赴任している)
*8 山上、前掲、p.52