本報告書は、世界観光機関(WTO)が発行した "Tourism Highlights" を訳出したものです。本資料を転記される場合は、出典を「WTO(世界観光機関)資料」と明示して下さい。
1998年国際観光概観
修正後暫定値(1999年5月19日現在)
1. 1998年の世界の観光
<1998年の国際観光客到着数は2.5%の伸び>
1998年の世界の国際観光は、観光客到着数が6億3,500万人(対前年比2.5%増)、観光収入(国際線運賃収入は除く)が4,390億米ドル(同0.3%増)であった。到着数、観光収入とも対前年伸び率が97年を下回ったのは、東アジアと太平洋諸国への到着数と観光収入が減少したためである。
国際観光収入は、89年から93年までは年平均10%の伸び率を記録したが、94年から98年は同5.7%に下がった。しかし、世界の国際観光収入の比較は米ドルベースで行われており、米ドルが過去10年の間に大幅に変動しているので、この点を考慮に入れる必要がある。
例えば、98年の国際観光収入は対前年比0.3%の微増に止まったが、これは主要観光客送り出し国の通貨に対して米ドルの価値が上昇したためである。イタリアやフランス、スペインなどの主要観光客受入国は、観光客が大幅に増えた結果、98年の米ドルベースの国際観光収入が平均で対前年比6.5%の増を記録した。
<1989年から98年までの10年間、世界の国際観光客到着数は年平均4.5%の増加。国際観光収入(国際線運賃収入を除く)は同期間7.9%の増加>
過去10年間の国際観光客到着数の推移を見ると、国によっては必ずしもデータが完全ではないものの、観光産業の成長の様子が分かる。89年から93年までの世界の国際観光客到着数の年平均増加率は5%であったが、これは観光産業が経済変動やその他の問題から受ける影響がいかに少ないかを示している。94年から98年までの5年間は国際観光客到着数の年平均増加率は3.5%に減少した。しかし、これも、この期間の主要先進国の遅い経済回復や長引く高失業率、アジアの通貨危機を考えれば、高い増加率といえよう。
<1998年の航空旅客の伸びは大幅ダウン>
世界の観光旅行の回復は96年の航空旅客の伸びを見ても分かる。しかし、国際民間航空機関(ICAO)発表の暫定値を見る限りでは、国際線定期便を含む98年の世界の総航空旅客数の対前年伸び率はわずか1%であった。
96年までの5年間は年平均7%、97年は8%と大幅な伸びを見せていた航空旅客数の増加率が、98年になりこのように大幅に落ちたのは、特に世界の航空旅客の3分の1以上を占め、最近まで高成長率を維持してきたアジア・太平洋地域の航空会社の旅客数がわずかながら減少したことによる。他の地域の航空会社の旅客数は、伸び率は前の数年に比べ落ちたものの増加した。ただ、中東とアフリカの航空会社の旅客数はほとんど増減がなかった。