審査所感
毎日書道展会友
書道芸術院漢字部審査員
全日本学校書道連盟審査員
伊勢神宮奉納書道展審査員
手代木真風
夜明け前の空がうす紅に染まり次第にその色を増し、大きな太陽がゆらゆらと昇ってゆく、赤く広がり冷気の中にほんのり暖かさを感じさせる正月の初日の出でした。
第二十二回全日本剣道道場連盟による、書道展の開催にあたり、全国より多数の応募作品が有り、審査には苦慮しました。年々新たなる豆剣士の出品もあり新鮮なる趣も楽しみの一つでもあります。
現代は、コンピューターの時代であり、今や書類、手紙の類は、ワープロ、パソコンなどボタンやスイッチの操作で出来てしまいます。だがこれは人に物事を伝える手段であって、自己を表現するものではない。一画の線、一つの点で造られる文字を大切にしたい、我が国古来の伝統文化を存続させることは我々日本人に取っての一つの義務とも云うべきことではなかろうか。
自分の手による「自分の文字」を書くことによって「文字」そのものを知り理解し、それのもつ強さ、優雅さとないまぜにした、凛とした冷気にも似たきびしさをも合わせ持つ文字を大事にしてほしい。
扨て今回の作品に就いては、全般的に運筆に少々難が見えた。凡そ「道」を極めるには何事によらず、基本がすべてである。基礎があってこその剣道であり書道であります。
書は芸術的要素の多い部門であるから、スピード感、的確なる点と線が必要です。そして対峙した時の心、剣道にも同じ事が云えましょう。線の一本点の一つが重なり合い交差して書かれる文字は後世に今の文化を伝える手段であると云えましょう。又小さな事ですが十年二十年後に己自身を忍ぶよすがと成りましょう。
次回は二十一世紀です。又皆さんの素晴らしい作品にめぐり合える事を期待して居ります。