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さて? 黒潮? 黒潮続流? 黒潮反流及び? 親潮は日本の外洋である深い海での海流でしたが、日本の南西海域には東シナ海があります。ここでは太陸棚が広がっている漁場であり、鉱物資源も埋蔵されていて国際的にかなり複雑な情勢下にあるため、海洋の研究が進み難い海域です。それに加えて東シナ海には、巨大河川である黄河や揚子江から大量の水が流れ込み、それらの沿岸域に土砂や地球温暖化物質を放出しています。こうした条件下にあって、台湾の東岸を黒潮本流が通る影響もあってなかなか複雑であり、干満差が激しいので流速計の設置もむつかしいことから、今後の調査の進展が期待される海域です。

次に日本海は、[第一図]の? の対馬暖流が流れ込み、狭くて浅い二つの海峡で外海と繋がっている閉じた海域です。最近の人工衛星による観測によりますと、黒潮系の水と東シナ海の水が混じった海水と、黒潮本流から直接分かれた海水とが時々一緒になって日本海に入るのが対馬暖流だということです。対馬暖流の一部は本州沿いに北上し、? 津軽暖流として太平洋に出ますが、残りはそのまま北海道に沿ってさらに北上し、宗谷海峡を抜けオホーツク海に入る? 宗谷暖流となります。また、日本海の北部には、沿海州に沿って南下する? リマン海流という寒流が流れていて、これは太平洋の親潮に対応するほどですが、日本で観測をすることが困難なため、詳細不明のままです。なお日本海には「日本海固有水」という特有の水塊があります。この日本海固有水は、日本海全体の八割以上を占めており水温や塩分が鉛直的にかなり一様で、溶存酸素量が多いという特徴があります。どうして固有水が出来るのかは、太平洋と日本海が浅い海峡で繋がっていることを考えに入れると、日本海固有水は冬に海面が季節風で冷やされて生じる対流によって、造られるのではないかと考えられます。しかしそのような固有水が出来るほど強く冷える海面域は、日本海の北部の沿海州海岸部ですから、それも詳しい観測が出来ず、今後の課題となっています。しかし最近の化学トレーサーを使った実験研究によれば、日本海での鉛直混合の時間スケールは百年程度で、日本海に海水が滞留する時間も百年程度という結果が得られております。

さて話が少し後戻りしますが?宗谷暖流は宗谷海峡を通ってオホーツク海にでて北海道の東岸を南下しています。そこで、北海道の北端の稚内、オホーツク側を南へ下った網走、その南の根室、太平洋側の釧路の四つの都市を、年平均気温の低い順に並べてみますと、普通、緯度の高い都市ほど、年平均気温が低いものですが、これらの都市については、釧路(5.7度)根室(5.9度)網走(6.0度)稚内(6.4度)となり南北が逆転します。勿論これは? の宗谷暖流と? の親潮寒流の仕業です。? の対馬暖流も福井の海岸に水仙を咲かせ、日本海側に冬の大雪をもたらすのも、黒潮系の対馬暖流の働きによることは申すまでもありません。

 

★世界を巡る深層の流れ

海水の温度は、深いところほど低くなっています。その一例として[第三図]をご覧下さい。鳥島の北およそ百キロで測った水温と塩分の垂直分布(四月末)です。海面が日射を受けて暖められると水温は上がり軽くなって表面に昇り、すぐ下層の水との密度差が大きくなります。そのために海面下百メートルくらいに水温が急に変わる「水温躍層」ができています。それを過ぎると深さと共にどんどん下がりますが、八百メートル以下では水温の下がり方が鈍くなっています。

 

 

 

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