はじめに
東京国際舞台芸術フェスティバル'99(TIF'99)は、財団法人東京都歴史文化財団、社団法人国際演劇協会(ITI/UNESCO)日本センターと、東京国際舞台芸術フェスティバル'99実行委員会との共催事業として、都内各地で1999年9月23日から10月31日まで開催されました。
国際共同製作公演、海外招聘公演、都内演劇・舞踊団体の公演、地域で活躍するリージョナル劇団の公演などのプログラムのほか、演出家や振付家などによるトークショーや講座・シンポジウム、学生を対象としたシアター・ツアー、また海外からプレゼンターやディレクターを招聘する交流プログラムなど周辺事業の拡充に努めました。
また、昨今の経済情勢やアートのプロデュース形態の推移を考慮し、各事業ごとに共催者を募り、共催事業を組み立てることに大きな力をそそぎました。国際交流基金、財団法人地域創造、東京ドイツ文化センター、くりっく世田谷文化生活情報センター(世田谷パブリックシアター)、パークタワー・アートプログラム(パークタワーホール)、財団法人葛飾区文化振興財団(かめありリリオホール)など今後ともより密な関係を保っていきたいと思います。
このフェスティバルの成立に欠かせないのが経済的な援助です。特に日本財団からの補助があったということは大きな支えとなって、フェスティバル事務局を勇気づけてくれました。また財団法人セゾン文化財団からは資金面だけでなく、よき理解者として暖かい援助をいただきました。
企業からのサポートもなくてはならぬものです。トヨタ自動車株式会社社会文化室の担当の方々には経済的支援のほか様々なアドバイスをいただきました。松下電器産業株式会社、株式会社資生堂も担当者のご尽力により協力関係が築くことができました。アサヒビール株式会社からは経済的援助のほか、社員の方のボランティアによる援助もありました。今後ともより一層の強いきずなをつくっていきたいと考えています。
今、舞台芸術の世界では、ミレニアムをテーマに海外の大きなプロジェクトの推進、また東京以外の地域からの力強い息吹きが現実のものとなって我々のもとに届き、東京というものの役割の再考にせまられていると考えられます。すでに舞台芸術の世界では東京一極集中は音を立てて崩壊しつつあります。これからは「地方の時代」だなどと余裕をもっていうことなどできなくなっていることをまず自覚すべきでしょう。この相対的な東京の地盤低下は、東京で最大の舞台芸術フェスティバルを実現する必然性を消し去り、今度は東京に住む我々こそが地方に舞台を見に行かなくてはならなくなる時代転換を予感させています。
そのようなパラダイムシフトを強く認識させ、あらためて東京の位置の再考をせまったものこそ、この東京国際舞台芸術フェスティバル'99であったといえるでしょう。今後10年の時が立ち、その時'99のフェスティバルを振り返る機会があるならば、これこそが時代の過渡をあらわしていたと思われるにちがいありません。