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第2章 「災害ボランティア活動に関する諸外国の実態」

 

本章では、今後、災害ボランティア活動に関する検討を進める上での参考とするため、米国をはじめとする諸外国における災害ボランティア活動の実態について、各国関係当局から寄せられたレポート等をもとに取りまとめた。

 

2.1 米国の場合

 

沿岸警備隊極東地区司令部からのレポートによれば、1980年代までは、米国においてもナホトカ号の事故と同様、流出油災害時における一般市民等による無償の油回収活動、すなわち災害ボランティア活動が頻繁に行われていたという。

しかしながら、現在は可能性として残されてはいるものの、ボランティア達が災害発生時、現場において油回収活動そのものに直接参加する事例は極めて希であるという。

(1) 米国1990年油濁法(OPA90)と連邦現場統制指揮官(FOSC)

1989年(平成元年)、米国アラスカ州プリンスウイリアムズ・サウンドで発生した、エクソン・バルディーズ号の座礁に伴う原油の大量流出事故は、防除作業の初期対応の遅れなどから、アラスカの貴重な自然環境、水産資源等に甚大な被害を及ぼし、大規模流出油事故対応の難しさを世界中に認識させる教訓ともなった。

この事故を教訓として、1990年(平成2年)11月、IMO(国際海事機関)では大規模流出油事故への対応の充実化を図るため、「各国油防除体制の強化」と「国際協力の枠組み」を定めた新条約、OPRC条約を採択した。

同条約は1995年(平成7年)5月に発効し、わが国に対しても、1996年(平成8年)1月17日から効力を生じている。我が国の国家緊急時計画は、OPRC条約の第6条の規定、すなわち「準備及び対応のための国家的な緊急時計画」をもとに策定されたものである。

ところで米国は、当時、OPRC条約の早期採択を支持する一方、国内における油防除対応能力の強化を図ることなどを目的に、米国1990年油濁法(Oil Pollution Act of 1990、以下OPA90と呼ぶ。)を制定した。OPA90では、米国における油防除対応能力の強化策が様々な角度から言及されている。

ここでまず取り上げておきたいことは、OPA90の制定に伴い連邦現場統制指揮官(Federal On-Scene Coordinator、以下FOSCと呼ぶ。)の権限が大幅に拡大されたという点である。

 

 

 

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