日本財団 図書館


3. Focus on IMO(仮訳)

 

IMO

1948-1998

 

異国からの侵入者

─バラスト水ヒッチハイカーを止める─

 

序文

 

船舶のバラスト水の中に便乗し大洋を横断する異国生命体は、海洋環境、公共財産及び人類の健康に対し、重大な問題を形成してきた。

油流出や海運によって生じる他の海洋汚染と異なり、外来生物及び海洋種を除去又は大洋に吸収させてしまうことはできない。ひとたび侵入した外来種を排除することはほとんど不可能であり、とかくするうちに大被害を引き起こすことがある。

具体例として、水面下構造物の表面や送水管の汚損の抑制・清掃のために数十億米ドルの費用が必要となるEuropean zebra mussel(Dreissena polymorpha、カワホトトギスガイ)の北米五大湖への侵入、アンチョビーやsprat(ニシン類の小魚)の漁場をほぼ絶滅させる結果となったAmerican comb jelly(Mnemiopsis leidyi、クシクラゲ類)の黒海及びアゾフ海への侵入等が挙げられる。

細菌Vibrio chorelae(Cholera)が、おそらくはバラスト水の排出を通じて、アジアからラテンアメリカ沿岸水域に持ち込まれた。また、麻痺性貝毒の原因となるGymnodinium及びAlexandrium属の東南アジア渦鞭毛虫類が、豪州水域で放出され、彼の地の貝類産業に被害を与えたこともある。

船舶は、油、穀物といった貨物を積載して水上を移動するように設計かつ建造されている。それゆえ、船舶が積地に向けて空船航海する場合や、1つの港で貨物の一部を揚荷した後に次の寄港地に向かうときには、要求される安全運用条件を満たすために船内にバラストを積載しなければならない。これら運用条件には、プロペラ効率及び舵効確保のため、また、特に荒天時において船首が水中から浮かび上がることを避けるため、船舶の喫水を十分に深く保ち続けること等が挙げられる。

バラストとは、このように、「喫水を増し、トリムを変化させ、復原性や応力負荷を許容範囲内に維持するため、船内に積み込まれる何らかの固体又は液体」として定義される。固体物質の積載には時間がかかるため、また、航海中のバラストが移動することにより船舶が不安定となる危険を回避するため、1880年代以降、水がバラストとして使用されている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION