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まえがき

 

この報告書は、平成11年度に実施した「船舶のバラスト水管理方策に係る調査研究」をとりまとめたものである。

 

緒言

 

地球規模の海洋環境保護問題として、船舶の運行に不可欠なバラスト水を媒体とする有害な海洋生物の国際間の移動とその拡散が問題となっている。国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会(MEPC)はこの問題を取りあげ、1991年の第31回会合では、各国がこの問題に対処する指針として「船舶のバラスト水および沈殿物の排出による好ましくない海洋生物および病原体の移入を防止するためのガイドラインに関する決議MEPC50(31)」を採択した。

また、IMOは、1993年の第18回総会で、「船舶のバラスト水および沈殿物からの好ましくない水生生物と病原体の導入を防止するためのガイドラインに関する総会決議A.774(18)」を採択した。さらに、1997年11月の第20回総会では、決議A.774(18)を廃止して、新たに「有害水生生物・病原体の移動を最小化する船舶バラスト水制御・管理のためのガイドラインに関する総会決議A.868(20)」を採択した。

1999年6〜7月のMEPC第43回会合においては、2000年〜2001年に法規制文書採択のための外交会議を開催することは困難であるとされたが、MEPCの重要課題として法規制案をできる限り早期に作成することで合意している。

資源輸入国であるわが国は、大量のバラスト水の積み出し国でもあり、かかる国際規制の影響も大きい。さらに、船種によっては外国で積み込まれたバラストがわが国港湾付近で排出されることもあり、これによる有害種の移入も当然懸念されるところである。

この問題の現在の対策としては、外洋におけるバラスト水の交換(リバラスト)が唯一行われている。ただし、この方法は、船体の安全性の問題や、海象・気象条件および短距離航路では実施が困難、さらに船員の労働負担が増加するなど多くの問題を抱えており、必ずしも万全の対策とは言い難い。にもかかわらず、米国、豪州、アルゼンチン等、遅々として進まない国際規制に業を煮やし、リバラストまたは同等の効果を有する処理を強制化する動きが相次いでいる。

そこで本事業は、リバラストに代わる代替手段を調査研究して、実用可能な基本システムを提案し、今後の研究指針を示したものである。実用化に向けては、まだ多くの実験検討を加える必要があるが、現時点における国際審議への対処に十分寄与できるものであると信じる。

本事業を進めるにあたり、委員および関係官庁の方々に度々お集まり頂き、貴重な御意見を賜った。ご指導ご協力頂いた各委員および関係各位に厚くお礼申し上げる。

 

 

 

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